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2.
思い詰めて、電車に飛び乗った。
降り立った駅は神明駅。
駅前のロータリーをぐるりと見回す。彼の住む町だ。
具体的なプランがあるわけではなかった。
いてもたってもいられなくなって来たけれど、何も連絡してないんだから居るかどうかもわからない。
それでも地図を見ながら歩き始める。
右足を出せば「会いたい」と思う。
左足を出せば「会えなくていい」と思う。
どんどん足が重くなる。
……もう一歩も歩けない。
足が止まる。
私は道の端にうずくまってしまった。
「どうしたん? あんた、何か辛いんか?」
女の人が声をかけてくれた。
「あ……、何でもないです」
急いで立ち上がったからか、立ちくらみがした。体がふらつく。
「ほら、今日は暑いでの。少し休んでいきねの」
女の人に誘われるままについて行くと、看板には『石田縞手織りセンター』と書いてある。
「石田縞?」
「そう。織物の名前。明治、大正の頃は、学校の制服は着物やったから、この石田縞やったんよ。ほんでもセーラー服が制服になってからは廃れてしまってね。幻の織物になってもたんよ」
このまま無くなってしまうのは惜しいと、最近になり復活させたらしい。
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