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 思い詰めて、電車に飛び乗った。  降り立った駅は神明駅。  駅前のロータリーをぐるりと見回す。彼の住む町だ。  具体的なプランがあるわけではなかった。  いてもたってもいられなくなって来たけれど、何も連絡してないんだから居るかどうかもわからない。 それでも地図を見ながら歩き始める。  右足を出せば「会いたい」と思う。  左足を出せば「会えなくていい」と思う。  どんどん足が重くなる。  ……もう一歩も歩けない。  足が止まる。  私は道の端にうずくまってしまった。 「どうしたん? あんた、何か辛いんか?」  女の人が声をかけてくれた。 「あ……、何でもないです」  急いで立ち上がったからか、立ちくらみがした。体がふらつく。 「ほら、今日は暑いでの。少し休んでいきねの」  女の人に誘われるままについて行くと、看板には『石田縞(いしだじま)手織りセンター』と書いてある。 「石田縞?」 「そう。織物の名前。明治、大正の頃は、学校の制服は着物やったから、この石田縞やったんよ。ほんでもセーラー服が制服になってからは廃れてしまってね。幻の織物になってもたんよ」  このまま無くなってしまうのは惜しいと、最近になり復活させたらしい。
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