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3.
次の日だった。
佐山くんがフロアーですれ違いざまに、おっ、と目を見開く。
「何かあったか?」
「え? そんなのわかる?」
見てわかるぐらい違いがあるんだろうか。
気分が顔色に出るなんて、子どもみたいだと恥ずかしくなる。
「何て言うか……今日は、スッキリした顔してるぞ」
佐山くんは、少し言いにくそうにする。
それでも、悪い意味ではないらしい。スッキリして見えるなら、昨日、機織りをしたからだろう。
「昨日さ、神明に行ったの」
「え? そこで何した?」
佐山くんは、勢いこんで聞いてくる。
「ん? 何したって、織物だよ。私がつるの恩返しみたいに、機織りしたの」
私が布を織るジェスチャーをすると、佐山くんは「へええー。機織り?」と、話が見えないような反応をする。
それで、石田縞のことを説明する。
その中で、復活させたということに関心を持ったようだった。
「それは昔の人がていねいな、いい仕事してたってことやな。やっぱり、一つ一つ真剣に仕事してかなあかんってことか」
うんうんと、かみしめるようにうなずいている。
へえ、この人って、こういう考え方するんだと、新鮮に感じた。
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