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6月ーー。
梅雨だというのに、梅雨の晴れ間に恵まれた日。
由希は朝から憂鬱な気分で、いとこから借りたドレスを着た。
今日は会社の同僚で、元彼である男の結婚式に出席するためだ。
人に相談すれば、行く必要なんてないと言われるだろう。
けれど、彼と由希が付き合っていたことを知っている会社の人間は一人もいないから、出席しなければ変な目で見られるかもしれない。
彼とは、同期であり、同じ部署の関係なのだ。
まるで祝福するかのような天気に背中を押されながら、たどり着いた教会で気が重くても由希は笑顔を顔に貼り付けた。
元彼は複雑な顔をしていたが、知ったことじゃない。
椅子に座る由希には周りの笑い声も、祝福の声も誓いの言葉も、教会の鐘の音でさえ雑音に聞こえる。
結婚式の二次会にも誘われたが、それだけは堪えられそうになくて、少し体調悪いと言って断った。
幸せと明るさが溢れる人々に背を向け、重い体を引きずるように家に帰ると、メイクもドレスもそのままに、ベッドに突っ伏せば安らぎが訪れた。
もう大丈夫だと自分では思っていたのに、それはただ単に自分に大丈夫だと言い聞かせていただけで、思っている以上に心はボロボロだったのかもしれない。
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