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やまない雨はない。
この言葉はいろんな場所で言われる。人生の辛い時期を投げ出したくなった時、こうして人は心をなだめて今の現状を耐え忍ぶのだ。
「そんなの無理だよ」
窓辺につるしたてるてる坊主は100個を超える。それなのに窓の外にはしっとりとぬれた青紫の紫陽花が、嬉しそうに花びらを開いてる。窓を叩く雨音は、やわらかくなったり、強くなったり、やみそうに思えても遠くで稲光がしてまた降り出すのだ。
いつから降り続けているのかそれすらもわからなくなっている。101個目のてるてる坊主を下げてため息をついた。
「あーした天気になあれ、今日こそ天気になあれ」
窓の方を見るまでもない。雨音がさらに激しくなり、私はため息をついた。私の彼氏は雨が降っていると家には来れない。私から会いに行けば良いのかもしれないけど、それはできなかった。
「だって、涙がとまらないんだもの。どうしたらとまるの?」
目から零れ落ちた滴が、ころころと転がって透き通った丸い水晶玉になる。薄いピンク色のカーペットの上に、水晶玉がいくつもいくつも転がっていた。
胸に手をあてるとまた涙があふれてきた。ころころと転がる水晶玉がきらきら光る。このまま涙がとまらなくて、水晶玉で自分が埋まってしまうのではないかと心配になった。
「そうしたら、あなたは悲しんでくれるかしら」
降り続く雨の向こうで微笑む太陽を思ってまた涙をこぼした。
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