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なのに、叶えてやることも、何も出来ない。サヨナラさえも、言えなかった。あいつを少しでも好きになってやれば良かった。少しくらい、想いに応えてやるべきだった。なのに、何一つ叶えてやれないなんて…。俺は、どうしたらいい?どうしたら、許されるんだよ」
俺がそう言って泣いていると、井上さんが優しく肩を抱いてくれた。
「それは、お前のこれからの生き方次第で、許されるかどうかは決まるんだ。このさき、だれかを好きになれば、分かるよ」
「…いやだ。俺は誰も好きになんかならない。そんな資格もない。俺は誰も好きになんかなっちゃだめだ。そんな資格ないんだから。約束一つ守れず、無様だよ。あいつに、せめてもの、償いだ。この先、誰かを愛する日なんて、きっと来ないんだ」
俺はそう言って、最後にもう一声大きく声を上げて、泣いた。
中学なんて、いい思い出なんかひとつもない。
そいつが亡くなってからは、俺はかなり荒れていた。喧嘩もしたし、高校生や大学生にも手を出した。しょっちゅう怪我して帰って来たり、夜中に補導されて帰って来たり。
でも、いつも井上さんがそばにいて、俺を叱って、見守ってくれたんだ。
俺は、高校に上がったら変わるんだ。
こんな情けない顔は、中学までにする。
それでも、誰も好きにならない。
恋愛なんて、しない。
俺が人を好きになれる権利なんて、あの時に剥奪されたんだから…。
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