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俺は坂井 理。
高校生になった。
高校は中学校から少し離れたから、中学からの知り合いはいない。みんな初対面だ。
グレーの生地に藍色のラインが斜めに一本入っただけのネクタイ。白いワイシャツにブレザーにグレーのズボン。それが制服だ。女子はグレイのチェックのリボンネクタイに同じ柄のミニのプリーツスカート。何処にでもいる、県立高校の普通科の高校生だ。
学生鞄を肩に掛けて、俺はあくびをしながら校門までの並木道を歩いていると、周りにいた男たちが、
「あれ、大垣西中の坂井じゃん?」
「え?あの喧嘩っぱやい?」
「ヤクザとも喧嘩したとか?!」
「ええぇ?!なんでこの学校に…」
などと、早速噂が広まった。
「有名人は辛いなぁ…。喧嘩はしないって井上さんとも約束はしたけど…いつまで持つか…」
俺はブツブツ呟いて歩いていると、同じように前を歩いていく女子を見た。
可愛い子も綺麗な子もいる。メガネっ子もいるし、まぁ、こんなもんか。
「かったるい」
ボソッと呟いて、俺は「はあっ」とため息をついて歩き出した。そうして教室に入っていくと、俺は窓際の真ん中の席に着いて、机に顔を伏せた。
寝るか。起きててもろくなことにならなそうだし。
ふと、女子たちのクスクス笑う声が聞こえて来て、俺は少しだけ顔を上げてみる。俺のことで笑ってるわけではなさそうだけど。
おさげに結っている女子をからかっているらしい。
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