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「お姉ちゃん!」
「…!」
若葉の大声で、私の思考は元に戻った。
「どうしたの?ボーッとして…。具合でも悪いの?」
「あ、ううん、大丈夫。ちょっと昔の事思い出してね…。」
「昔の事?」
「ほら、昔さ、私と若葉、一度生き別れちゃったでしょ?その間、実は私も寂しかったんだ。
あんなに可愛がっていた妹と離れ離れになって…。今思えば、私は悪いお姉ちゃんだなぁって、そう思っただけ。」
「……。」
ああ、黙り込んじゃった。
…と思ったら、若葉の口が開く───。
「そんな事ないよ。」
「ん?」
「私は、お姉ちゃんが大好きだよ。昔からずっと。こんなに寂しかったんだから、嫌うなんてありえないよ。
もし嫌ってたら、寂しがってない。お姉ちゃんもそうだったと思うよ。」
「若葉…。」
今まで可愛がってた妹にそう言われると、何だか安心する。
嫌っていなくて良かったと、心から思えた。
「そろそろ行こうか。濡れるの嫌だし。」
「え?うん。」
私はそう言って立ち上がる。
今から向かうのは、私の家。
まあ家って言うより、巣に近いかな。
何せ狭いし、長い間借りてるみたいな感じだし。
「ふえぇ~、ここがお姉ちゃんの…。」
「まあ、巣みたいなものだけどね。」
マンホールを開けた下水道に、テントが一つ建てられている。
あれが私の巣。
これなら家賃もいらないし、慣れれば寧ろ住み心地が良い。
え?体洗うのはどうしてるかって?
……。
それはご想像にお任せするかな。
「土足でいいよ。何も敷いてないし。」
「あ、うん。」
そう言うと、若葉を中に入らせた。
ただの貧乏生活に見えるかもしれないけど、全然問題ない。
「ずっとここに住んでるの?」
「うん。ここなら好き勝手できるかと思って。」
「て、適当だね…。」
まあ確かに適当っちゃ適当だけど。
「でもなんか、住み心地良さそう。よく長い間住めたね。お姉ちゃん。」
「慣れたら寧ろ良い場所だよ。」
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