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「うぅ…!」
長い戦いが続いた中、大屋は膝まづいた。
「卑怯よ!1人相手に2人がかりなんて!」
「2人相手にしちゃダメなんて言ってないでしょ?」
つい正論(?)を言ってしまった。
まあ、それが私の癖というか…ね…。
「…でも、大したもんだよ。あの現場で女の人殺したのに、それを隠していたなんてね。
よく逃れたよね。その罪から。」
「……。」
大屋は黙り込むと、ゆっくりと立ち上がる。
「うふ…、うふふふふ……。」
すると、何故か笑い出した。
「でも…、あんた達の負けよ。」
「…は?」
「ここで私を捕まえられないようじゃ、あんた達の負け。私を捕まえるまでずっとそれよ。」
「なに!?」
大屋がそう言うと、若葉が急に歯向かう。
若葉は、大屋に殺気を立てているように睨んでいた。
「それじゃ、負け犬はそこでお座りしてなさい。」
大屋はそう告げると、若葉の足が動く。
「待て!」
「若葉!」
スチャッ
「!?」
バンッ!
「あっぶな!」
突然大屋は銃を若葉に向け、撃ってきた。
間一髪で頭を下げさせ、何とか銃弾をかわす。
「…大丈夫?」
「うん…。」
「ダメだよ。1人で歯向かっちゃ。下手したら若葉が死んでたんだよ?」
「…ごめんなさい…。」
「…とりあえず、今の騒ぎをお巡りさんに報告した方がいいね。」
そう言うと、殺人現場にいたお巡りさんに報告しに、ビルへ向かった。
「…そうか。そいつが犯人だったんだな。
で、バレないように変装していたと。」
「ええ。私の見る限り、相当の強者です。並の人間には敵わないくらい。」
犯人…大屋佐江子は、普通の人間じゃ敵わない相手だ。
下手したら、すぐに殺される。油断禁物だ。
「とにかくわかった。大屋佐江子は、こっちで注意をかけておくよ。」
「ありがとうございます。」
私と若葉はお辞儀をし、警察署を後にした。
「…こんな綺麗な夜景があったんだね。」
「うん。」
私達が今いるのは、殺人現場とは別のビルの屋上。
非常階段から昇った所。
「ねえ、お姉ちゃん。」
「ん?」
「お姉ちゃんは…、大屋を追うの?」
「…当たり前でしょ。」
彼女が放った言葉…捕まえないと私達が負け続ける。
そんなのは嫌。負けるのだけは。
私は昔から負けず嫌いだった。
私が古武道を習ったのも、勝負に負けたくなかったから。
どちらかと言えば、強気なのは私の方。
何にも縛られたくなかった。
亡くなった両親の仇を討てないようじゃ、彼女の言っていた通り、負け続ける。
あの頃は、何もできなかった。
いつか両親を殺した奴を見つけ、仇を討ってやる。
そればかり考えていた。
「…昔からだよね。お姉ちゃん。」
「…え?」
「勝負は勝たないと意味がないって想い。
お姉ちゃんが小さい時、上手くいかなくてずっと泣いてたよね。
それを見て思ったんだ。「お姉ちゃんは負けず嫌いなんだ」って…。」
「……。
…まったく、よくそんな事覚えてたね。
若葉だって私に頭撫でられるの、まだ好きじゃん。まだまだ子供な所。」
「ふぇ!?そ、そんな事ないよ~。大体お姉ちゃんもまだ子供でしょ?」
「ふーん…。」
じゃあちょっと意地悪しようかな。
「ふぁっ。えへへ~。」
「ほら、子供じゃん。」
「うっ、も、もう!お姉ちゃんの意地悪~!」
「ふふっ…。」
やっぱりいくつになっても子供だなぁ。
それが、私の可愛い妹。
大屋佐江子。
彼女は、絶対に捕まえる。
そうなるまで、私は何度でも挑んでやる。
私が勝つまで、絶対に諦めないから───。
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