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夏を結ぶ
バス停から降りて五分。
なだらかな坂を降っていくと、海が見えた。
太陽に反射して海面がキラキラと光っている。
夏の暑さに少し圧倒されながら、ゆるゆると海へ向かって行く。
海水浴場の入口に入り、サイクリングロードを越えたところに結那がいるのが分かった。
つばの広い麦わら帽子に白のワンピース姿がよく似合っている。
「結那」
俺が後ろから声をかけると、嬉しそうにこちらを振り返った。
それが、やけにスローモーションのように見えて、あの頃とは違う黒に染め直された髪が綺麗に広がる。
彼女が気にしていた顎のニキビは綺麗になくなっていて、夏の太陽に照らされた肌は白く、透き通るようだった。
俺はもう一歩踏み出し、こう言った。
「ずっと覚えていてくれてありがとう。あの頃も今も、君は綺麗だ」
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