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「そりゃあ、一定数は確実に売れるさ。僕の固定ファンがいつも応援してくれるからな。だが、それだけだよ」 「いや、それだけじゃあ重版出来にはならないだろう?」 「映像化でパッと注目されて、それで増版が掛かるんだ。だが、いつもそこで終わりだ。新たなファンは増えず、本はすぐに古本屋コースだな」  それは、何ともやり切れない話だ。 (小説家には小説家の悩みがあるんだな。……確かに、どんなに話題の本でも、半年後には積み重なるようにブックオフに並んでるもんな。しかも、かなりの安価で)  固定ファンに支えられているが、新しい読者が付かないというのは、結構深刻な問題だろう。 「あんたも、苦労してんだな」  涼真には悠斗と違う悩みがあると知り、何となく距離が近くなったような気がした。  少しの沈黙のあと、悠斗はおもむろに言う。 「なら、今回のコミカライズはチャンスだな」 「?」 「今まであんたの作品を知らない読者が、俺の漫画を通して入って来るんだ。新規のファンを獲得する絶好の機会じゃないか」  悠斗のセリフに、涼真はコクリと頷く。 「ああ。だから僕は、作画担当の漫画家には妥協したくなかったんだ。出版物はデジタルのみだとは知らなかったが……それは僕の勉強不足だな。今はそういうのがなんだろう」 「下絵までは紙に描いているから、見たかったら持って来るぞ」 「いや、いい。君の実力はよく分かった」  フッと笑い、涼真は告げる。 「君の腕は、かなりの上級者だ。これだけ描けるのに、あまり知られていないのが不思議なくらいだよ」 「アシが長かったからな……まぁ、そんな事はどうでもいいか」  ゴホンと咳払いをすると、悠斗は単刀直入に切り出した。 「創刊号での新連載、既存の作品でのコミカライズは取りやめにしないか?」 「なんだと?」
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