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 だから、最初から壁を作っていたのだが。 「俺は、テツヤが好きだ」 「え?」  唐突の告白に驚いて、テツヤは目を見開く。  何の冗談だと言い掛けたが、痛い程に真面目な勝の眼差しに、そのセリフを舌に乗せるのは躊躇われた。  戸惑うテツヤへ、勝はゆっくりと両手を差し出す。 「どんなに俺がお前に本気なのか、少しだけでも解って欲しい」 「……」 「好きなんだ、テツヤの全部が。顔も性格も、その才能も。本当に全部が」 「……勝」  純粋で純情で、そして情熱溢れる勝。  見た目は、まだ成人してない少年のように可愛い外見をしているクセに、こんな修羅場に慣れている筈のテツヤをも圧倒する、勝。  そんな彼に、惹かれている自分の気持ちに、嘘を吐き続けるのは不可能であった。 「……でもお前は、俺の事を何も知らない」 「だから?」 「俺の中は、空っぽなんだ。ハリボテで表面だけごてごてに飾っているだけの、どうしようもない野郎なんだ。でも、お前は――」 「ずぐなし」 「?」 「怖がりって意味だよ」  勝は微笑みながら、差し出していた腕をテツヤの背に回して……。    ◇ 「? えっと、この先はどんな展開なんだ?」    白紙の原稿に困惑して、悠斗は、床に座ったままの涼真を振り返った。  ラブシーン、最低でもキスシーンを入れてくれと、オーダーされている。  そして悠斗は、根本的な事を見落としている事に気付いた。
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