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悠斗は肩をすくめたが、新しい仕事の事も気になっていたので、まずはこの男の為人を知るべきかと思い、不承不承その後に従った。
それにしても、この俺がホモ漫画の作画をするとは――と、少々情けない気分になりながら。
◇
何処に行くかと思いきや、着いた先は涼真の自宅アパートだった。
海外でも人気の売れっ子小説家と言うから、たいそうな日本家屋を想像していたのだが、住まいは悠斗とさほど変わらない。
間取りは2LDKで、一室を書斎兼仕事場として使っているという。
ただその室内は、涼真の性格を表すように、清潔でホコリ一つなくピシッと整理整頓されていた。
足の踏み場もないような、悠斗のアパートとは大違いだ。
「どうぞ」
「あ、ども」
通された書斎で丁寧にお茶を出され、なんとなく悠斗は気後れしていた。
壁一面に小難しいような本が並んでいる。
悠斗とて漫画家だ。
資料として色々な本は持っているが、それらは自分の本とは全くジャンルが違う。どれもやたらと高尚そうで、小説家の方が作家としてランクが上だとでも言わんばかりのラインナップに辟易してしまいそうだ。
(でも、こいつって所詮はホモ小説家だろう? 俺がへりくだる必要は無いよな)
フンっと鼻で笑うと、悠斗はわざと音を立てて茶を啜った。
「――で、わざわざ俺を連れてきた理由は何だ? ああ、訛りを教えてくれってヤツだったか」
「そうだ」
「面倒クセェ話だな。第一、訛り100%で喋っている若いヤツなんか今時いねーぞ。俺が喋るのも標準語混じりだし」
「それでいい。それが、リアルだからな」
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