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“実力はあるけれど、話は全然面白くない”  それは、悠斗が今まで何度も言われてきた言葉だった。 “こんなに描けるのに、どうしてストーリーはダメなんだろうね。こんなモノじゃあ先には進めないよ”  見下されたような気がして、そう言った担当の編集者へ、つい殴り掛かりそうになってしまった事もある。  何が流行っているか、どういうキャラクターがウケているか?  出版社が力を入れている傾向を分析して、それに合わせて漫画を描きもした。  そうやって悠斗なりに、自分の漫画に低評価を下した奴等を見返してやろうと頑張ってきたが、何を描いても思うように行かず、今まで増刊号や代原でようやく紙面に載るのが精いっぱいだった。 (※代原とは、連載漫画家が原稿落とした代わりに掲載される予備原稿のことだ)  その時の悔しい気持ちを思い出し、悠斗は憮然とする。 「……編集者の意見で左右されたから、ストーリーが日和ったんだ。その漫画も、その時の影響が出ちまっただけだっ」  苦し紛れのセリフをどう思ったか、涼真は涼しい顔のままで(おもて)を上げた。  そうして、ソファーに行儀悪く座っている悠斗を見る。  次に出てきた言葉は、一層、悠斗を憂鬱にさせるセリフだった。 「これも良いが、僕は本はで読むのが好きなんだ。の、君の紙の漫画を教えて欲しい」 「――よ」 「ん? 何と言った? 聞こえるように言ってくれ」 「ねぇよ!」  激高し、悠斗は声を荒げる。 「だいたい、今時紙の本なんざ誰も買わねーだろ! デジタル出版で充分だ! それに、紙本で出版したら在庫を抱える事になりえるから、今は何処の出版社も紙本は敬遠してるんだ。だから、別にこんなこと(デジタルのみ)は珍しくもなんともない、普通の事だ!」  一気にそれだけ言うと、悠斗は肩で息をついた。
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