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小説家も漫画家も、基本的にやる事は変わらない。
自分達の表現したい世界で、いかに読者のハートを掴めるかだ。
誰の共感も得ることが出来ない独りよがりの物語など、ガキのマスターベーションと何ら変わりない。
自己満足で終わりたいならそれでもいいだろうが、『プロ』を名乗るならばそんな事は絶対に許されない。
読者に『これは金を出すに値する作品だ』と思わせなければ、プロ失格だ。
「どうしたって、僕らは人の顔色を窺ってしまう。君はしきりに“映える”と口にしていたが、それはやはり読者の視線を気にしているから出る発言なんだろう。そして、実際に君の漫画は素晴らしく綺麗で目を引く」
「……でも面白くないか」
「ああ。残念だが」
正直すぎる感想に、悠斗は溜め息をついた。
ここはいつものように「っざけんじゃねーよ!」と激怒する所であろうが、なんせ自分でも薄々自覚していただけに、正直言って凹んでしまった。
それに、今まで編集者に指摘されていたという事実もある。
反論するには、もう疲れた。
(ウケそうなキャラを作って、ウケそうなセリフを描いて。設定も人気の異世界転生にして――でも、やっぱりダメなんだな)
落ち込む悠斗に、涼真は思いがけない事を言った。
「僕の話を聞いてくれるか」
「え?」
「こんな僕にも、悩みがあってね――」
そう呟くと、涼真は本棚に挟んであった手紙の束を取り出した。
その手紙を見遣り、悠斗はフンっと鼻で笑う。
「なんだ、自慢か?」
涼真が手にしたそれは、ファンレターだった。
さては、“こんなに熱心な感想を送ってくれるファンが自分にはいるのだ”と言いたいのかと勘繰る悠斗であったが、意に反して、涼真は憂鬱そうに口を開いた。
「――――自慢では、ない」
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