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「自慢じゃないって? じゃあ、何なんだよ?」 「今まで僕が世に出した本は20冊だ」 (?)  それを聞き、改めて手渡された手紙の束をよくよく見てみると、全部、ほぼ同じ読者からのファンレターだと分かった。  つまり、これは全て固定ファンからの手紙という事になる。 「有難い事じゃねーか。固定ファンが付いてくれるのを喜ばない作家なんざ、普通はいねーぞ」  悠斗がそう言うと、涼真は秀麗なおもてに影を落とした。 「……そりゃあ、嬉しいさ」 「だろ?」 「だが、毎回だ」  いったい、涼真はそれの何が気に入らないのか?  いまいちピンと来なくて、悠斗は首をかしげる。 「だから何が不満なんだよ?」  そう直球をぶつけたところ、涼真は絞り出すような小さな声で呟いた。 「この通り、僕のファンは一定数いるが、それ以上んだ」  この告白を聞き、悠斗は呆気に取られた。 「はっ!?」 「直筆のファンレターは、文字を書く手間や切手を買う必要もあるし、更にそれを投函までしなければ作家に届かない。何でもネットで済ませることが可能な世の中で、それをやってのけるには並大抵の事ではない。手紙を送ってくれる熱心なファンには、いつも感謝している」 ――――だが、と涼真は続ける。 「ここまでの情熱を持って応援してくれるファンが、何年経っても増えないんだ。本を発行しても一定数は売れるが、そこから先には行けない」 「ちょっと待てよ、あんたは、重版出来もある人気作家だと聞いていたぞ」  そうだ、中河静流(新人編集者)の話では、右近涼真の作品は必ずヒットすると言われており、それ故、どこの出版社も秋波を送る人気作家であると。  そのセリフに、涼真は自嘲気に唇をゆがめる。
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