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「あの~で、どうでしょう? 」
オドオドとした様子で、如何にも『ピヨピヨのひよこ』といった雰囲気の編集者を間に挟み、二人の作家は無言で睨み合っていた。
睨み合う片方の男の名は右近涼真。
育ちの良い御曹司のような雰囲気を醸す、なかなかの美青年だ。
端麗な容姿はどこか上品な公家のようであり、佇んでいるだけで人目を引くタイプの男だった。
この涼真。
じつはBL小説家としてそこそこ名の知れた作家であり、その作品は何度かアニメ化やドラマ化、実写映画化もされていて、国内海外問わず根強いファンも多い人気作家であった。
BL小説はやはり偏見もあるのか、そう簡単に重版出来まで売り上げが伸びるようなものではない。
だが、この涼真の作品に限ってはその通説は当てはまらない。
書いたら必ずその作品はヒットすると言われており、それ故、どこの出版社も秋波を送る人気作家であった。
その前で、腕を組んで仁王立ちをしている青年。
彼の名は左文字悠斗。
品の良さそうな雰囲気の涼真と違い、こちらは一見すると無頼漢のようである。
明るい茶色に染めている髪は少しだけ縛れる程度に伸びており、到底サラリーマンのような堅気の商売には見えない。
黙っていればピューマのように精悍な容姿にスラッとした体形ではあるので、モデルのようでもあるが。
しかし目つきと態度がいかにも悪そうなので、やはりモデルというよりもチンピラに見える。
だが、その職業はチンピラでもモデルでもなく、なんと漫画家であった。
まだ28という若さでありながら、かつては青年誌で連載を持つ人気漫画家のチーフアシスタントをしていた事もある腕前だった。
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