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しかし、やはり夢は自分の連載を持つことなワケで。
そんなこんなで、確かな画力を活かしてデビューはしたのだが――――。
増刊号の読み切りを足掛かりに、本誌で連載を勝ち取る……という理想の展開には手が届かないまま、売れっ子漫画家と大喧嘩の一歩手前までトラブってしまい。
結果、それまで世話になっていた青年誌から、撤退する事になってしまった次第だ。
そして、どうやらA出版の青年誌で描いていた漫画家が出禁になったらしいと聞き付けた文夏社のマリサ社長は、直接、悠斗へ連絡を取った。
本当に偶然であるが、マリサは悠斗の描くイラストの大ファンであったのだ。
「あんた、大御所を怒らせて仕事を干されたらしいわね? それなら、私のところで描いてみない? 」
「は? っていうか、どうして俺の番号知ってるんだよ? 」
マリサ社長の事は以前から知っていたが、決して番号を交換するような仲ではない。
訝しむ悠斗に対し、マリサは高らかな笑い声を上げた。
「ハーハハハハ! 私が知りたいと思ったら、あんたの番号も家も全部解るようになっているのよ。この私に興味を持ってもらった事を、光栄に思いなさいっ」
よく分からない理屈だが、どうやら何度か小説の挿絵を描いたり二次創作のイラストをSNSに上げたのを観て、マリサは以前から『自分が新しく立ち上げる雑誌の漫画を描いて欲しい。っていうか、描かせたい』と、スカウトの機会を狙っていたようだ。
いずれにしても、自分の絵を気に入っていると言われるのは、漫画家としては素直に嬉しい。
しかも、新しく立ち上げる雑誌の漫画を描いて欲しいと、向こうからオファーが来るとは……率直に言うと、ありがたい話だ。
「ま、いいぜ。ちょうどヒマだしな」
そう、上機嫌で返事をした悠斗に、マリサも上機嫌で答えた。
「ありがとう。それじゃあ、具体的な話をするわね――」
と、ここまでが、左文字悠斗の機嫌が良かった最後であった。
◇
「なんで俺が、ホモ小説を元に漫画を描かないとダメなんだよ!? 」
怒りで震える悠斗の手には『追憶の背中~愛しのラマン~』という本が握られていた。
内容は、いま言った通りド直球の、男性同士の恋愛小説だ。
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