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 すると中河が、意外にも仲裁に入ってきた。 「右近先生の気持ちは分かります。ですがこれは小説ではありません。冒頭、巻頭カラーから始まる期待の漫画なんです。初回コンセプトは『情熱と愛』な訳ですから、最低でもキスシーンくらいは入れてもらわないと雑誌の宣伝倒れになります」  思いがけず正論を述べる中河に、涼真は「だが……」と言い掛けたが、それを制したのは悠斗だった。 「これ以上言い合うのはヤメておこうぜ。悔しいが、編集がNOというならそれに従うのがルールだ。だろ?」  沈黙している担当の岸を見遣りながら、悠斗はそう水を向けた。 「しかしラブシーンまで入れて欲しいなら、最初から言ってほしかったけどな」 「……済まない。営業から色々あって、昨夜修正が入ったんだ。中高生向けではなく成人の方をターゲットにするなら、それに見合う内容でなければ営業が掛けられないと。守谷編集長もマリサ社長も、そっちの意見を採用との事だ」  作家の全員には通達したのだが、涼真&悠斗ペアが到着する方が早かったというワケだ。  だが、そもそもネームが一発で通る方が珍しい。  漫画でが入るのはよくある事だ。  なので悠斗は「はいはい、分かったよ」とあっけらかんと返事をする。  そうして、改めてネームに修正用のペンを走らせた。 「しゃーない。それじゃ、後ろに回すつもりだったここのエピソードを前に持って来るか。この流れなら、最低でもキスシーンまでは行けるだろう。その代わりに、このバイトの場面はカットしないとだな」  悠斗がそう言うと、岸もネームに目を落としながら口を開く。 「そうなるな。勿体ないが……」 「ページ内で山を作れってなら、最低でも5? いや3ページは必要だな。ってなると」  冷静に原稿を手直しする悠斗と岸であったが、涼真はそれを信じられないと言った様子で見る。 「どうして君たちは……勝とテツヤの気持ちを蔑ろにするんだ!」 「え?」 「考えられない! それがここのやり方なのか!?」  あんなにキャラクターに同調して作り上げたのに、それをどうしてあっさりと捨てる?
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