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そう言い切った涼真に、悠斗は嘆息しながら言葉を投げ掛けた。
「三流ポルノだろうと、売れたらそれが名作になる。売れなきゃあ、誰の記憶にも残らないただの駄作だ。俺はまたそんな駄作を描くくらいなら、漫画家を返上して転職するね」
「赤の他人の意見で、簡単に内容を左右されてもいいと？」
「編集者は赤の他人じゃない。俺たちはチームなんだ。むしろ、岸さん達はかなり協力的な方だと思うぜ。ヒドイ担当の中には、作家を放置するヤツもいるからな」
漫画や小説だけで食っていけるのは、極一部だけだ。
アシスタントと両立しながら、この業界に嚙り付いているのも疲れた。
だが、安藤マリサが『ハッキリ言ってつまんないわ』と言った、あのセリフだけは撤回させてやりたいと思う。
「俺は、正直言ってBLを下に見ていた。でも、それは間違いだったと気付かせてくれたのはあんただ」
散々悪態をついていた悠斗の方が、今やこの合作に前向きになっている。
「一晩中あんたを『勝』だと思ってプロットを練った。そうしたら、マジになった。ここまで来ておいてこの仕事を投げ出すなんて、もう俺には考えられない」
ブラッシュアップした文句の付けようのない漫画を描きたい。
そして、アンケートでもぶっちぎりの一位を取りたい。
社長の安藤マリサや、編集部の奴等をぎゃふんと言わせたい。
ここまで強く、それを望んだことは無かった。
「俺は勝とテツヤに、天辺を取らせてやりたいんだ」
その鍵を、右近涼真が握っている。
だから悠斗は、初めて深々と頭を下げた。
「頼む。あんたは嫌かもしれないが、これからも俺に協力してくれ」
「……そうだな。僕も、勝とテツヤが生き生きと動いているような絵を見たい。それには君の力が必要だ」
「じゃあっ」
「それなのに、一晩中練ったプロットを元に書いたネームを、編集の一声で君があっさり撤回したから……逆上してしまった」
悠斗はプロの漫画家だし、担当もプロの編集者だ。
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