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彼等は雑誌のコンセプトに合わせて内容を変更し、その中で最良の作品を創らなければならないのだ。
大雑把な依頼を受けて、好きなように小説を書いていた自分とは違う苦労があるのだろう。
その事に、もっと寛容になるべきだった。
「ありがとう」
ホッとして、握り締めていた原稿を机へ置いた悠斗の背に、床に座ったままの涼真が声を掛けた。
「だが、訂正させてもらおう。売れたら名作なのではなく、共感を得たから名作なのだ。そしてこれも前言撤回になるが、僕は三流ポルノも嫌いじゃない」
「っ!?」
「僕は、昔のカストリ雑誌も収集している。低俗で卑猥で淫靡なそれらは、作品作りの良い資料になる。僕にとって、人というものの本質を知る手引書のようなものだ」
涼真は、この性格故、他人と深く係わった事がほとんど無い。
昔から、生身の人間に対して淡白な所為か、恋人とも長くは続かない。
またそれを、寂しいと思った事も無い。
涼真にとって大切なのは空想の世界であり、そこに棲む架空の住民達だった。
「今まで僕は、彼等にたくさん恋をして来た。いまも恋をしている。だから、彼等をこのまま見捨てるわけには行かない」
「あんた――」
「今の僕にとって、世界の中心は勝とテツヤだ。彼等の恋を応援したいと思って、ここに踏み止まった」
小説家は、孤独だ。
基本的に、たった一人で真っ白な世界に挑み、そこに文字で世界を創り上げる。
目に見える物など何一つないのに、有るものとして書くのだ。
だが、今回は違う。
昨夜、悠斗が描いてくれた勝とテツヤのイラストを見て、心にポッと花が咲いた。
体の中心に、火が点った。
だから――――
「君が頭を下げなくても、僕は彼等と心中するつもりだ」
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