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 そう言い切った涼真からは、覚悟という名の炎が燃え上がっているようだった。  お高く留まっている鼻持ちならない野郎だと思っていたが、とんでもない。  右近涼真という男は、自分以上の情熱家ではないか。  どうやら自分は、まだまだ人を見る目がないようだ。 ――――そう思い、悠斗はフッと息をつきながら、手渡された原稿へ目線を落とした。    ◇  貸しスタジオで、テツヤが気まぐれに叩いたドラムに、勝は強く心を打たれたようだ。  何度も断ったのに、懲りずにしつこく付きまとう。  終いには、セフレと一緒にラブホテルへ入ろうとした現場まで付いて来る始末だ。  どんなに邪険にしても決して諦めない勝に業を煮やし、とうとうテツヤは怒りをぶつけた。 「お前、いい加減にしろよ! 金ならくれてやるから、それ遣ってバンドのメンバーでも何でも集めりゃあいいだろう!!」 「俺が欲しいのは金じゃないって、何度も言ってるじゃないか!」  負けじと言い返す勝は、黒目がちの瞳を潤ませながらそう断言した。  それに、テツヤに資金面で援助されるまでもなく、上京する時の為に貯めた金だってまだまだ残っている。  テツヤが今までどんな連中と付き合ってきたのかは知らないが、そんな金の亡者のような言い方をされるのも真っ平だ。 「俺は、テツヤとバンドを組みたいんだ」 「だから、俺のはただの素人の――」 「素人が何だよ。みんな最初は素人じゃないかっ。何で俺と組んでくれないんだ!」 「……」  余程悔しいのか、涙を浮かべて言う勝の顔を見ながら、テツヤは苦い過去を思い出した。  昔。  他人の言葉を信じて、純粋に夢を見て……そして無残に裏切られた。 『お前に期待してんのは金だけだよ』、と。  もうあんな裏切りをされるのは、二度と御免だ。
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