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 ドクンドクンと、心臓の音がうるさいくらいに響く。  悠斗は自分でも意識しないまま、両手を涼真の背中へ回していた。 「好きだ」 「――――僕もだよ、テツヤ」  耳に心地よい声が零れ落ちると同時に、涼真は悠斗の胸の中へと身をゆだねる。  そうしてうっとりとした表情で、唇をそっと寄せて来た。  その緋色の唇がなんとも魅惑的で、目が離せない。 (涼真……)  (まさる)になりきっている涼真は、本当に可愛くて可憐で。  今まで、同性に対して恋情など抱いた事のない悠斗の心を激しく揺さぶる。 (ま、まずいぞ。これ以上は――)  脳内は嵐のように混乱し、収拾がつかない。 「あ……あのよぉ」  開きかけた唇を、涼真に塞がれた。  涼真は、悠斗と違ってこういった事には慣れていないだろうに、テクニックではない激しい情熱を傾けて口付けをしてくる。  それ(情熱)に圧倒され、まるで童貞の小僧に戻ったように、悠斗の方が完全に動転した。  しかし涼真はそれに構わず、全体重をかけて、悠斗を床へと押し倒した。 「君が好きだよ、テツヤ」 「ア、アリガトウ」 「何だよ、急に硬くなりやがって」  クスクスと笑い、涼真は着ている服を脱ぎ始めた。  その間、悠斗の上に馬乗りになったままだ。  これにはさすがに慌てて、悠斗は「おいっ」と声を上げるが。 「君の全てが欲しい。バンドを組んでほしいのは勿論だけど、それ以上に……恋人になって欲しいんだ。僕は、東京に来たばっかりで浮かれているのかもしれない。明日になったら後悔するかもしれない。だけどこの瞬間だけは、君が欲しい」  滾るような熱い思いをぶつけると、涼真()は、悠斗のズボンのファスナーを引き下ろした。
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