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(マズイ!!)
このままでは涼真のペースになってしまう。
己の貞操の危機を本能で感じ取り、悠斗は大いに焦った。
涼真こと、『勝』の積極的な勢いにこのまま流されてしまっては、元も子もない。
初期設定では、都会人のテツヤの方がずっと世間に擦れていて、必然的に多くの恋愛も経験しており、こういった事にはかなり長けているハズだった。
だから悠斗は、テツヤの方がBLにおける“タチ”側になるのだろうと勝手に解釈していたのだが。
今更ながら、これをしっかりと決めていなかったことを、猛烈に後悔する。
(まさか流れ次第では、タチとネコが変わる可能性もあったってことか!? そんなあやふやな設定で進めるなんて、漫画だったらありえねーぞ! クソッこれだから小説家はっ)
そういえば、プロットどころか結末も考えずに、思うがままに小説を書いている作家も実際にいた事を思い出した。
さては涼真もそのタイプだったかと気付き、悠斗は頭を抱えそうになりながら、何とか態勢を整えて反撃に転じる。
「りょ……勝。こんなフローリングの床の上じゃあ、さすがに背中が痛てぇよ」
馬乗りになっている涼真を見上げながらそう声を掛けたところ、涼真はハッとした様子でコクリと頷いた。
「そうだね、ゴメン。じゃあ向こうに行こう」
言いながら、男らしく悠斗を抱き上げて立ち上がろうとするが、さすがにそれは無理だ。
何と言っても、涼真と悠斗では対格差が歴然だ。
「う――」
顔を真っ赤にしてプルプルと震えながら、『テツヤ』持ち上げようと頑張るその身体を、今度は逆に『テツヤ』がするりと腕を回してひょいっと抱え上げた。
お姫様抱っこされた涼真は、頬を染めたままの顔で間近の悠斗を見つめる。
「なんだよ、ズルいぞ」
ぷうっと頬を膨らまさす、その顔がなんと可愛い事か!
今度こそ本当に、悠斗の体の芯へと確実に火が点った。
「黙って俺に抱かれろよ」
「じゃあ、バンド組んでくれる?」
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