100人が本棚に入れています
本棚に追加
腕の中で、上目遣いでこんな事を言うなんて反則だ。
ついつい、本音が漏れてしまう。
「お前、実は相当たち悪ぃな」
「え?」
「無意識の小悪魔ってこと。こんなんされたら、男はメロメロになっちまうぞ」
そう言ったところ、まだ勝のままの涼真は小首をかしげて、瞳を潤ませた。
「テツヤの意地悪。いい加減に、イエスかノーかハッキリさせろよっ」
『メロメロになった』だけでは、答えとしては中途半端だ。
勝が惚れたのは、ドラムを叩いているテツヤだ。
そこから一気に、テツヤの全てが好きになったのだ。
――――この男とバンドを組みたい。
この願いが叶うかどうかの答えを保留したままでは、いくら好きだの可愛いだの言われても嬉しくない。
ゆっくりとエアーベッドの上に降ろされたタイミングで、再び涼真は相手に飛びついた。
「テツヤっ」
「っ!?」
有無を言わさず引き寄せ、深く唇を重ねて、涼真は問う。
「僕の事を好きだって言うなら、あの音の続きを一緒に作ってよ」
スタジオで即興で始まったセッションは、途中で終わったままだ。
あの先に広がる音の未来を感じ取り、ずっと勝の心が騒いでいる。
音の続きがずっとずっと聴きたくて、火照った体が内側から破裂しそうだ。
このままでは居られないと、皆この歌を聞けと、今この瞬間も、魂の底から沸き立つような叫び声を上げたくて仕方がない。
「テツヤも、僕と同じモノを感じ取った筈だろう?」
「ああ」
こいつには降参だと言うように肩をすくめて、テツヤは微笑んだ。
「お前には負けたよ。バンド、一緒にやるか」
とうとう、その答えを口にしていた。
そして悠斗は、既に半裸になっていた涼真の身体へ、ゆっくりと上体を屈めて行った。
最初のコメントを投稿しよう!