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 腕の中で、上目遣いでこんな事を言うなんて反則だ。  ついつい、本音が漏れてしまう。 「お前、実は」 「え?」 「無意識の小悪魔ってこと。こんなんされたら、男はメロメロになっちまうぞ」  そう言ったところ、まだのままの涼真は小首をかしげて、瞳を潤ませた。 「テツヤの意地悪。いい加減に、イエスかノーかハッキリさせろよっ」 『メロメロになった』だけでは、答えとしては中途半端だ。  勝が惚れたのは、ドラムを叩いているテツヤだ。  そこから一気に、テツヤの全てが好きになったのだ。 ――――この男とバンドを組みたい。  この願いが叶うかどうかの答えを保留したままでは、いくら好きだの可愛いだの言われても嬉しくない。  ゆっくりとエアーベッドの上に降ろされたタイミングで、再び涼真()は相手に飛びついた。 「テツヤっ」 「っ!?」  有無を言わさず引き寄せ、深く唇を重ねて、涼真は問う。 「僕の事を好きだって言うなら、あの音の続きを一緒に作ってよ」  スタジオで即興で始まったセッションは、途中で終わったままだ。  あの先に広がる音の未来を感じ取り、ずっと勝の心が騒いでいる。  音の続きがずっとずっと聴きたくて、火照った体が内側から破裂しそうだ。  このままでは居られないと、皆この歌を聞けと、今この瞬間も、魂の底から沸き立つような叫び声を上げたくて仕方がない。 「テツヤも、僕と同じモノを感じ取った筈だろう?」 「ああ」  こいつには降参だと言うように肩をすくめて、テツヤ(悠斗)は微笑んだ。 「お前には負けたよ。バンド、一緒にやるか」  とうとう、その答えを口にしていた。  そして悠斗は、既に半裸になっていた涼真の身体へ、ゆっくりと上体を屈めて行った。
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