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キリリとした眼差しで悠斗を見つめながら、涼真は糾弾する。
「僕の作品を読んだ上でそんな事を言っているのなら納得もするが、読みもしないでホモ小説と言い捨てられるのは我慢できない。……君はどうせ、後者だろう?」
「うっ」
確かに、その通りだ。
悠斗はまだ一ページもこの本を読んでいない。
依頼された漫画の仕事は原作ありきと言われ、怒髪天を突く勢いのままここへ来たのだから。
「だ、だが――」
「男のくせに言い訳をする気か? それこそ男らしくないんじゃないのか? 」
形勢逆転だ。
それを察した新人編集者の静流は、スッと両者のあいだへ割って入った。
「はーい、それじゃあいいですか? とりあえず今回は、こういった流れで進めるつもりだと編集の意向を伝えるまでが目的だったんで。まだ作画の方も具体的な頁数までは決まってないんですよ。別企画の方も、まだ決定していないくらいで」
それに、と続ける。
「編集長の間では、作画と原作の相性をみてから決めたいような話も出ているようです。どうしてもダメそうなら、作画は別の新人を起用するかもしれないと」
「なに? この仕事を蹴ったら、俺のクビを切るってのか?」
「え? まぁ――クビとはちょっと違うと思いますが……違う雑誌の単発なら空きはあるそうですから、そっちになるかも。いずれにせよ悠斗先生作画の、創刊号の連載は消えますが」
険しい表情になる悠斗にビクビクしながらも、逆に、恐れ知らずの新人編集者は遠慮なく思った事を口に出す。
「なので、親睦を深める為にも、御二方でまずは飲み会などいかがでしょう? 」
「冗談じゃねーよ!」
「冗談ではない!」
奇跡的にそろったハーモニーに、静流は「おうっ」とのけぞる。
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