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 その後、岸は菓子折りを持参してすっ飛んできた。  自分が何をしているのかイマイチ分かっていない様子のド新人、中河の頭を掴んで、一緒になって平身低頭と頭を下げて。 “コイツには、これからしっかりと教育するので、どうか今回の事はお許しください”と丁寧に謝罪した。  岸とは前の出版社でもまぁまぁ付き合いがあったので、悠斗(はると)は苦笑いをしながら矛を収めたが。  だが、涼真(りょうま)の方は、編集者にあるまじき中河の態度が余程癇に障ったのか、岸と中河が帰るまでずっと無言であった。    ◇ 「なぁ、あんた。いつまでもてんじゃねーよ。感じ悪いぜ?」  悠斗は菓子折りを手にしながら、腕を組んだまま佇む涼真へそう話しかけた。 「あいつ、研修もろくすっぽしてないド新人だったらしいじゃん。やる気が空回りしたってだけで悪気も無いようだったし。ま、今回は許してやれよ」  根が楽天家の悠斗はそう言うと、菓子折りの外紙をビリっと裂いた。  そうして、涼真を見ないで「半分はオレのな。隣んちのガキにやろっと」と呟く。  その悠斗に、涼真が鋭い口調で問い掛けた。 「とは、どういう意味だ」 「は?」 「お前は、僕の事をバカにしているのか?」 「はぁ!?」  突然喧嘩腰に食って掛かられ、悠斗もムッとする。 「俺がいつ、お前の事をバカにしたよ?」 「意味の分からない言葉を使って、僕の事を貶しているじゃないか。どうせ頑固者とか意地が悪いとか言っているんだろう。だが――」 「ちょいまち! あんた、誤解している」
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