意外な接点

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全員がエントリーシートの記入を終えると、参加者たちはシートを持って席を立ち、ホールの中央に移動した。 上品な紫色の絨毯が敷かれたそのスペースには、2脚ずつ隣り合わせになった椅子が30脚・・・15組用意されていた。 「はい、みなさん、今日はようこそいらっしゃいました!本日司会を務めさせていただく、『ハッピーフラワー』の三村です!よろしくお願いしまーす」 受付にいた40代くらいの女性は、「三村さん」というお名前だった。 三村さんは、小さなステージの上でこれからの流れを簡単に説明した後で、「おまたせしました~!」と笑顔で言って、ステージを降りて私たちと同じ目線になった。 「では、ここからは、1:1のトークタイムになりますよ~」 男女で隣り合った椅子に座って、5分間、二人で自由におしゃべりをする。5分経ったら、男性が移動して、次の相手の女性と話す。 参加相手全員と、5分ずつ話ができるシステムだ。 「お相手のエントリーシートを見ながらお話ししますとね、話題も切れないと思います。では、みなさん近くの椅子にお座りになってくださいね~」 三村さんの声かけに、私は、目の前にあった椅子に座った。私の椅子の隣には、おとなしそうな男性が会釈をして腰掛けた。 「はい!では、スタートでーす!」 全員が着席を終えたところで、三村さんがストップウォッチをポチッと押した。緊張感がぐんと増す。 「ど、どうも・・・」 「あっ、はい。よろしくお願いします・・・」 ぎこちなく、隣の男性と会話が始まる。 いちおう、看護師という対人の仕事をしているけれど、仕事の時とは空気が違った。 緊張する。 とりあえず、エントリーシートに書いてあることを見ながら話しかけてみるけれど、私もおしゃべり上手じゃないし、男性も緊張しているのだろう、しばしば沈黙してしまう。 (5分・・・5分って、結構長い・・・) この感じで、あと14人と話すのか。私には、結構つらいかもしれない・・・。 5分毎に、隣に座る男性が入れ変わってはイチから話す。やはり、沈黙がつらくて長い、と感じる人もいたけれど、話し上手で、あっという間に5分が過ぎる人もいた。
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