意外な接点

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カウンターが6席と、2人掛けの小さなテーブルが2つだけ。 温かみのあるオレンジ色の照明に、可愛くて品のある和風の内装。 この、こじんまりとした居心地のいい空間は、高校時代からの友人である、金城萌花(かねしろもえか)が営んでいる「はなの季」という小料理店だ。 元々は、萌花のお母さんがはじめたお店なのだけど、体調を崩してしまったために、5年前から萌花が代わりに切り盛りしている。 お母さんは、今は体調がいいときに時々お手伝いをしているくらい。 萌花は、そんな「小料理店のママ」だけど、プライベートでも、29歳にして現在8歳の椿(つばき)ちゃんのママである。 住居はお店の上なので、夜の仕事が主だとはいえ、外でパートをしていた時より「子どもがすぐ近くにいるし、自宅の下で働けるのは安心」なのだそう。 私は、萌花の友人でいて、「はなの季」の常連客。居心地がいいのはもちろんだけど、何より、萌花の作る料理が美味しくて絶品なのだ。 そして今日も、私は萌花の煮物で傷心の心を癒やしていた。 「あー・・・おいしい。私、もう、萌花と結婚したいよ~」 日本酒何杯飲んだっけ。 ほろ酔いで呟く私に、萌花はかわいい顔でにっこり笑った。 「なに言ってるの。宗田さんにフラれたからってそんなに自棄にならないの。美桜だって、料理すごく上手いじゃない」 「・・・違う。私の料理は、計量スプーンできっちり計って、ああいう、レシピ通りの味のものが一応作れるっていうだけだもん。萌花は適当とかっていうけどさ、自分の感覚だけで美味しいものが作れるじゃない。才能だよ」 私は割と何事も、「適当」ってことが上手くできない。 簡単にできる煮物すら、毎回計量スプーンできっちり計って作っている。
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