意外な接点

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意外な接点

「真木野さーん!冨士原さん、点滴終わったってー」 「あ、はい。行きまーす」 声をかけられ、物品補充をしていた作業中の手を止める。時計を見ると、もう少しで13:30。 (そうだな、そろそろ終わる時間だね) 「じゃあ、上行ってきます」 受付の永田さんに声をかけると、私は、必要物品を持って2階へと続く階段を、速い速度で上っていった。 2階フロアの奥にある、個室のドアをノックして、「失礼します」と声をかけて引き戸を開けた。 ベッドの上の鼻筋の通った横顔が、少しだけ、こちらを向いた。 「お疲れ様でした。ご気分、お変わりないですか」 「はい」 「じゃあ、点滴抜きますね」 ベッドサイドにしゃがみ込み、冨士原さんの左腕に固定された白いテープを、ゆっくりと、皮膚が赤くならないように剥がしていく。 何度見ても、いい血管だなあと思う。 「申し訳ありません。いつも診療時間を過ぎてしまって」 低い声が耳に届いて、私は、慌てて凝視していた血管から視線を外した。職業病かもしれないけれど、変な趣味のようで恥ずかしい。 「いえ。過ぎるって言っても30分ぐらいですし、そのくらいの時間は、1階の患者さんもまだだいたい残っているので」 「・・・そうですか。そう言っていただけると。ありがとうございます」 淡々と語るその顔は、いつも通り涼やかで、言葉に感情がのっているのかよくわからなくなるけれど。 今は眼鏡を外した状態だからか、いつもよりも少しだけ、印象は柔らかい。 会話をしながら、残っているテープを剥がして点滴の針を抜く。止血用のテープを貼ると、後は、いつもと同じ説明をする。 「じゃあ、ここ、5分くらい押さえておいてくださいね」 「はい。ありがとうございました。終わったら降りて行きますので」 「お願いします」 頭を下げて部屋を出る。そして私は、診察室のある1階フロアへと一足先に下りて行った。
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