13 「命売ります」三島由紀夫

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 カップ焼きそばを作って暖かい席に座り、箸を持つ前に本を開く。しおりははじめの数ページのところに挟まっていた。元々本に挟まっていたような感じではない場所で、友人がはさんだのかもしれないが、きっと自分がここまでは読んだのだろう。  しかし、しおりの後から読んでも記憶がまったく蘇ってこない。だから最初から読み返すことにした。うすっぺらなページ数だから大した時間はかからないだろう。記憶にも残ってないし、きっと数ページで読み飽きるような内容なのだ。食事を摂る十数分、私の気が紛れればいいと思って焼きそばをほおばりつつページをめくる。  しかし、そこから読み続け、結局読み終えてしまった。予想外に面白かった。現在使っていない言葉も多いのだが読みやすかった。書いてある言葉が伝わる。小説はそれが大事だと思う。最近は、読もうとしても読めない本が多すぎて本を買って読む気が失せていた。借りておけば、自分の財布は痛まないから良いと思って借りていた部分もある。  三島由紀夫さんの「命売ります」はすんなりと読めた。風景の描写も嫌いじゃない。絶妙だと思う。ゴテゴテしていなくて、シンプルでスマートに伝わってくる。粋でいなせとは、これのことを言うのだろう。  友人が「三島由紀夫にはまっている」と言っていて、だから「貸して」と借りた。以前テレビで美輪明宏さんが三島由紀夫さんのことを話していて、それで興味を持っていた。それまでも三島由紀夫さんは昭和の時代に壮絶な死に方をした小説家としか知らなかった。  軍服を着て割腹自殺をした人ではあまりよい印象ではない。腫物でも扱うような世間の扱い。だから、身近に三島由紀夫がなかった。きっと、小説にも強気で嫌な感じが現れているのではないかと避けたい感じがしていた。  でも、美輪明宏さんと仲良しだったんだと聞くとスピリチュアルな感じになって、借りて読めるのなら読みたいと思った。  だって、美輪さんのお友達なら、きっとすごい人に違いない。  読んでみてそれまでのイメージがイイ感じにまとまった。なるほど、こういう本を書く人だったんだ。美輪明宏さんのお友達というのもうなずける。隅から隅までセンスが良かった。  読んだ後がすっきり。  ここまで私の好みに合う終わり方があるだろうか。 ※ 次のページからネタバレします。
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