13 「命売ります」三島由紀夫

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13 「命売ります」三島由紀夫

「借りパクは赦さねえ」  小学校から細々と連絡を取っている大切な友人の言葉である。  彼女から本を借りた時に言われた。ドスの効いた声だったが脅す感じではなく、ちょっとした雑談で出た言葉。『脅し』に分類されるであろう言葉も、信頼関係があれば微笑ましい物となる。  ただ、その言葉の前に本を借りていたから「あ、ごめん。そう言う意味じゃないよ」と言ってもいた。これがなくてもひどいヤツとは思わない。  だって本を貸してくれているわけだし。  このやり取りがあったのは今から3,4年は前だろうか。もしかすると4,5年かもしれない。その後、県をまたぐ移動は避けているため会えていない。それを言い訳にしているが、まだ読み終わっていなくて返せてもいない。  借りパクというのは何かを借りたままパクってしまうこと。パクるには盗むという意味もあるらしく、要は物を借りたまま返さないことである。返すつもりはある。だから、長期間借りているが、まだパクってはいない。面白そうだったから借りたのだが、何分、私には本を読む習慣がない。  この本を読むまで、たまに使うバッグに入れっぱなしになっていた。読む意思はあるのだが、そうなるには時間がかかる。しかし、その日はそのたまに使うバッグを持って出かけていて、たまたまスマホの使用ギガ数を見て、まだ2月が10日を過ぎたばかりだというのに、0.77Gも使ってしまっていたことに気づいた。アプリを使いすぎたようだ。  家にWi-Fiを置いているのでひと月1Gで足りる。それなのに残り0.23Gだと書いてあった。いくら2月は28日までしかないと言っても、三分の一強過ぎただけで四分の三以上使ってしまっているのだ。昼の食事を摂っている間にメールやニュースを読もうと思っていたがやめた。  そして、電気代もネット代もかからない本を読むことにした。どうせ難解な文字の羅列で1行読むのに何回も読み直さないといけないレベルなんだろうと思い込んでいた。だって、昭和を代表する小説家が書いた小説なんだからスラスラ読めるはずがない。
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