13 「命売ります」三島由紀夫

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 ざくっとしたあらすじは、主人公の羽仁男が新聞に載せた「命売ります」という記事を、日本の警察の暗号と悪の組織が勘違いして、羽仁男は何度も死にそうな目に遭うけれど死んでないところで終わる。死んでないけど、助かるかどうかはわからない。  省略しすぎで面白かった部分は何も説明できていないが、そんな感じのストーリー。嫌いではない終わり方だった。  自分の命を雑に扱った人間が、ハッピーエンドになってはいけないのかもしれないし、それでも主人公が死んでしまったら読後に嫌な気持ちになる。だからちょうどいい。安全な場所に行けたねよかったよかったで終わっていない。それも嫌いではないけれど、それまでイイ感じに面白く話が進んでいたのに、いきなりそっち方向に行ったら興が冷める。  物語が終わった後も、悪の組織は壊滅していないから殺される可能性が高い。でも、羽仁男のことが大好きな薫君や玲子も無事だから彼らが助けてくれるかもしれない。そもそも玲子の束縛のおかげで助かってたし。束縛か死なら死を選ぶかもしれないけれど、それをどのように羽仁男が選択するかも読みたい。薫君と生き延びるならそれは続きが出て欲しい気がする。命売りますのテイストではなくなるかもしれないけれど。  作者自身が自殺しているから命を軽く見ている話なのかと思うとそうでもなくて、死のうとすると死ねなくて生きようとすると死ぬ、というわけでもない。羽仁男は男性からも女性からも好かれて、だから生きるチャンスが生まれて、それを上手に見つける。  結局なんだかんだ言って彼は死にたくない。人はどんな状況でも生きようと努力をするということなのかもしれない。  組み立てている途中の立体パズルが崩れる直前の絶妙な静の状態で終わっている。……ような気がする。もうちょっとで出来上がって、出来上がれば壊れないのにまだそこまで行ってないから壊れそうなんだけど、とりあえず崩れないからここで終わりってことで。みたいな?  想像の余地というわけでもなくて、続きは知りたくないからここで終わりでいい。かもしれない。羽仁男が気に入ったから、彼が死ぬところは読みたくない。もしくは、誰もが恐れる死を飄々と見つめていた羽仁男が気に入っていたのに、その死を恐れて普通の人のように恐れおののく姿を読みたくないのかもしれない。  とにかくこの本は面白かった。  読み終えたから、もう返せる。  パクるつもりはないので、友人に連絡を取って返すことにしよう。  ただ、なんとなくだが、金閣寺も借りたような気がする。  命売りますを借りた半年後くらいに金閣寺を借りて、その時にそう言われたような?  出てこなかったら借りパクか?
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