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夏織は、両手を天へ向け顎をあげ目を閉じた。雨を受け入れるという風に、全身を雨に打たせている。
髪は濡れ、雨がしたたり落ち、彼女の白いタンクトップまで伝い、ただでさえぐっしょりと濡れた布は膨らんだふたつの胸にぴったりと張り付いている。
俺は目を見張った。
夏織と彼女に打ち付ける雨が光を放っているように見えるでないか。
やまない雨を浴びて、夏織の体全体が光っている。
…これは、ほんとうのことなのか…
わからない。けれど、俺には確かに見えているのだ…
雨は降り続けている。
夏織が、顔をこちらに向け、笑う。
やまない雨がやむときは、果たして来るのだろうか。
いや、わからないんだ、未来なんて。
だけど…、生きよう。俺は生きる。そう、思った。
俺は両手を天へ向け、同時に顎をあげ雨を受ける。
夏織と並んで立って、雨を浴び続けた。
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