~進まない関係~

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~進まない関係~

彩華は、悩んでいた。温泉に行って以来紗絢が、ずっと何かを悩んでいるのを見ていたから、そして学校の事も。  夏休み以降、ずっと休学していたので、本当なら、症状が改善されてきたので、復学するべきなのだが、彩華は戻るつもりはなかったから。  学校の事も、いずれ答えを出さないといけないけど、先ずは紗絢の事である。  何を悩んでるのか、聞きたいし自分の事で悩んでいるのなら、尚更聞きたかった。  お仕事の事なら、彩華にはわからないので、力になれる可能性は低いけど、彩華自身の事なら、言ってくれたら何とかなる。  悪いところがあるなら直すし、してほしい事があるなら、出来る事ならしてあげたいと思う。  紗絢が大好きだから、愛してる紗絢のして欲しい事ならするのにと考えていた。  一方紗絢も相変わらず自分の気持ちと戦いながら、悩んでいた。  彩華が欲しい、彩華の全てが欲しくて、どうしたらいいのかわからなくて、困り果てていた。  さすがに、彩華には相談なんて出来ないし、何でも音に頼るのもと思い、何とか自分で答えを出さないといけないけど、初めて恋人が出来た紗絢には、正直言って難易度が高かった。  (あぅ~どうしたらいいの?こんなんじゃいつか彩華を襲ってしまうよ~そんな事したら、絶対に彩華に嫌われるよ~)  とうとう頭を抱えて悩んでしまう。  そんな紗絢を見て、彩華が心配そうに声を掛けてくる。  「紗絢、何か悩みあるなら話して」  「あ、彩華?」  頭を抱えて悩んでいた為に、彩華がすぐ側まで来ていた事に気づいていなかった。  「な、何でもないよ」  「嘘!頭抱えてたのに」  さすがに、頭を抱えていれば、何でもないと言う嘘は通用しない。  「紗絢、話してよ。お仕事の事なら力になれるとは言えないけど、もし私の事なら、私に悪いところあるなら、言ってくれたら直すから」  彩華の事と言えば、彩華の事なのだが、さすがに、彩華を抱きたくて悩んでるとは言えなかった。  「彩華に悪いところなんてないよ。ただ私初めて恋人出来たから、それで、どうしていいのかわからなくて.......」  「私だって、紗絢が初めての恋人だから、どうしていいのかわからないよ。だから二人で考えるものだと思うよ」  「う、うん」  余程彩華の方が、大人だなと紗絢は思ってしまう。  「だからね。何でも話して欲しいの」  「うん」  「私に出来る事なら、何でもするから」  何でもするからの言葉に、一瞬言ってしまおうかと思ってしまったが、紗絢は何とか 喉まで出掛かった言葉を飲み込む。  紗絢は、大人だけど、彩華はまだ学生なんだからと。  「だから、本当は今聞きたいけど、言える時になったら話してね」  「うん」  うんとしか言えなかった。彩華の優しい気持ちが嬉しかったけど、言えなかった。こんな事言えるはずなかったから。  紗絢は、自分の経験のなさを恨んだ。過去に怯えて、逃げてきた自分を。  自分が逃げずに恋愛して来たら、彩華に心配掛けずに済んだのにと。  再び悩んでしまった紗絢を、彩華が何も言わずに後ろから抱きしめてくれる。  彩華の温もりが伝わってくる。  とても安心出来た。  自分より、年下なのに彩華には不思議な包容力があると、紗絢は思った。  彩華の手に自分の手を添えると「彩華ありがとう」と呟く。  彩華は、何故紗絢は私を求めてくれないのだろうと考えていた。彩華が大好きな百合小説では、恋人になったら、そういう関係になっている。本の内容にも寄るが、彩華が読んできた本では、だいたいの作品でキス以上の行為が、それとなく又は詳しく描写されていたので、彩華は恋人が出来たら自分もそういう事するんだと思っていたのに。  なのに、紗絢は一向にそういう事を求めて来なかった。  (私が、まだ学生だから?)  でもと思う。クラスメートが会話しているのが、聞こえてきた時には、そういう話をしていた。  もう経験したとか、私はまだだとか、そんな会話をしていたのを思い出す。  クラスメートの相手が女の子とは限らないが、恋人のいるクラスメートは、私初体験済ませたと嬉しそうに言っていたのを、彩華は一人本を読みながら聞いていた事を思い出して、(どうして、紗絢は求めないのかな?)と考えていた。  (でも、私から求めたら紗絢にHな女の子って、思われても嫌だし)  彩華は、彩華で悩んでいた。  互いに進まない関係を悩んでいた。  紗絢は、自分で考えても答えが出ないので、音を頼る事にした。頼ってばかりで申し訳ないと思いながらも、紗絢には音に頼るしかなかった。  音は、紗絢が女の子が好きな事を理解してくれていたから、さすがに、女の子が好きで恋愛対象だとは他の友人には言えなかったので。  音には、彩華と付き合う事になったと、本当の恋人になった事は、ちゃんとメールしていた。どうなったのかを心配してメールをくれていたので。  紗絢は、音に彩華との事で、相談したい事があるので、時間ある時でいいので、相談に乗って下さいとメールをする。  音から、明日なら時間あるから、明日なら大丈夫と返事が来たので、明日お願いしますと返事を送る。  (彩華に、明日仕事の事で音先輩に相談に乗ってもらいに行くって伝えないと)  彩華が、まだ不安定だった時に、彩華を一人置いて出てしまって、彩華に心配を掛けて不安にさせてしまったので、今度はちゃんと言って行かないと思って、本を読んでいた彩華に声を掛ける。  「彩華、ちょっといい?」  彩華は、本を置くと「どうしたの?」と聞いてくる。  「明日仕事の事で、音先輩に相談しに行ってくるから、夕食少し遅くなるからごめんね」  「そうなの、すぐに帰って来る?」  「話ししたら、すぐに帰って来るから心配しないの」  彩華が心配そうに言うので、紗絢は安心させるように優しく言う。  「わかった」  彩華は、納得のいった様ないかない様な顔をしていたが「わかった」と言うと再び本を読み始める。  さすがに、本当の事は言えないので、心の中で(彩華ごめんね)と呟くと紗絢は仕事を再開した。  次の日、何故か彩華はいつも以上に紗絢にベッタリだった。不安定な時には、常にだったが、温泉旅行以降は、不安定な時よりは減っていたので、何故か今日は寝起きから甘えん坊さんになっていた。  「彩華、そんなにくっつかれたら仕事出来ないんだけど」  「紗絢は、お仕事と私とどっちが大切なの!」  と何故か怒り口調で言ってきたかと思うと「だって寂しいんだもん」と甘えてくる。  紗絢は、また症状が酷くなったのかと思ったけど、そんな感じではない。  「彩華は、甘えん坊さんね」  そう言うと、更に甘えてくる。  「だって、紗絢今日一人でお出掛けするから」  紗絢は、そういう事かと思った。今日紗絢が音先輩に相談しに出掛けるから、その間一人なのが寂しいのだと。  「お話ししたら帰って来るから、心配しないで大丈夫だよ」  それでも、納得しないので、紗絢は少し意地悪をしてみる。  「あーちゃんは、いつまでも子供ね。ママが少し居ないだけで、そんな顔するなんて、本当に甘えん坊さんね」  以前さーちゃんを弄られたので、少しばかり仕返しをしてみた。すると彩華は、紗絢の予想を超えた反応を見せた。  「あーちゃんは、子供だもん。ママがいないと寂しいんだもん」  あれ?紗絢は自分の予想と違う彩華の反応に困る。  「彩華?」  「あーちゃんは、ママがいないと寂しくて、泣いちゃうもん」  そういうと、本当に目に涙を浮かべ始めてしまう。  これはどういう事?私どうしたらいいの?と、紗絢は自分で仕掛けておいて困ってしまう。  「ママ、すぐに帰って来る?」  これは、付き合うべきだよねと思い紗絢は、彩華のママになる。  「ママ、お話し終わったらすぐに帰って来るから、それまでお家でいい子にしていられる?」  彩華は、涙目で「うん」と答える。  紗絢は、今だけだよねと思いながらも、自分の時の彩華を考えると、今日1日こんな感じかもと思った。  今日は、1日彩華のママでいようと、紗絢は決めた。 紗絢は「ママ行っちゃ嫌だー」と愚図る彩華を何とか宥めて、音との待ち合わせ場所に向かう。  前回の相談の時に、音が連れて行ってくれたカフェである。  紗絢は、カフェに入ると音はまだだったので、店員さんに後でもう一人来ますと伝えると席に案内してもらう。  紗絢は、今日はカフェオレじゃなくて、オレンジジュースを注文する。  少し待つと、音が来たので、「音先輩、ここです」と音に声を掛ける。  音は、仕事帰りなので、スーツ姿だった。  相変わらず、音先輩のスーツ姿は決まってるなと思う。キャリアウーマンって感じで、私とは雰囲気が違うなと、自分の姿を見ながら思ってしまう。  音は、コーヒーを注文する。  「久しぶりね。元気にラブラブ生活してるかな?」  「ら、ラブラブって」  「彩華さんの症状が、だいぶ改善されて、めでたく恋人になったんでしょ」  「そうてすけど、ラブラブって」  「まさか、最早倦怠期なの?」  「ち、違いますよ!」  音は、わかってるわよって顔をする。  「それで、相談したい事って?」  「あの実は......」  紗絢は、自分が彩華を求めてしまっている事を彩華とそういう関係になりたいけど、どうしていいかわからなくて悩んでいると音に話す。  「なんだ、そんな事、もっと大変な事かと思ったんだけど」  「そ、そんな事って」  「恋人とそういう関係になりたいなんて、当たり前だし、普通の考えでしょ」  「そうだと思いますけど、私彩華が初めての恋人だから、どうしていいかわからなくて、どう誘っていいか......」  「私の初めて奪って下さい!って言えばいいんじゃない」  「言えません!」  「なら、彩華さんの初めてを下さいって、素直に言えばいいと思うけど。  「......」  紗絢は、顔を真っ赤にして俯いてしまう。  「下手な事を言うより、正直に言う方がいいと思うけど」  「でも、彩華はまだ学生ですし」  「確かに、学生ね。なら彩華さんが成人するまで待つの?」  「えっと......」  「こんな事言うと、娘のいる母親としてどうかと思うけど、恋人同士で愛し合ってるなら、年なんて関係ないと思うけど、もちろん相手がOKならだけど」  確かに恋人同士で、相手の了承を得られるならいいとは紗絢も思うけど、その了承をどう得ればいいのかが、わからなくて困っているのである。  「だから、その方法がわからないんです。ストレートには、言えませんし」  「面倒臭いわね。女は度胸よ!」  音が力説する。  「音先輩、お願いします。何かいい方法ないですか?」  本当にどうしていいかわからないので、紗絢は音に泣きつく。  「少しは、自分で考えなさいと言いたいけど、必死に考えたけど思い付かなかったんでしょ?」  「はい」  そう言うと、紗絢は項垂れてしまう。  「そうね。いきなりは無理だと思うから、先ずは彩華さんが、そういう行為に興味があるのか、そういう行為に嫌悪感を抱いていないかを確認してみたら」  「彩華がですか?」  「そう。もし興味があるなら、黒崎さんが求めても、嫌がる事はないと思うし、恋人なんだから、でももし嫌悪感を抱いているなら今は無理ね」  「もし嫌悪感を抱いていたら、興味を持つまで、待つしかないって事ですか?」  「そうね。待つか、嫌悪感を何故持っているのかを聞くしかないわね」  彩華が、そういう行為に興味があるのか、それとも嫌悪感を抱いているのか、正直わからない。でも彩華の持っていた本を読ませてもらった時、その本にはそういう描写があった。  (本にはそういう描写あったけど、でも彩華の気持ちがどっちかわからないし)  「先ずは、彩華さんの気持ちを確認する事ね」  「はい、ありがとうございます」  「そういう関係になったとして、そういう行為の相談はやめてね。私、女性とはないからわからないから」  「は、はい」  先に言われてしまった。彩華とそういう関係になって、(つまず)いたら相談しようと思っていたのに。  紗絢は、駄目元で聞いてみる。  「先輩、そういう関係なったら、やっぱり相談駄目ですか?」  「駄目よ!私だって経験ない事は、相談に乗れないし」  紗絢は、尚も粘ってみる。  「本当に駄目ですか?」  捨てられた子犬のような瞳で、音を見つめながら聞いてみる。  「す、少し位なら仕方ないからいいわよ」  音は、仕方ないからと言いつつも折れてくれた。  「音先輩、ありがとうございます!」  「相談が終わったなら、早く愛しの彩華さんの所に帰ってあげなさい。寂しい思いしてるわよ」  「はい、本当にありがとうございます」  音にお礼を言うと、伝票を持って帰ろうとすると、「私が払うわよ。後輩に奢らせられないから」と言うと、紗絢から伝票を取って音が先に行ってしまう。  「音先輩、本当にありがとうございます。ご馳走様です」  そう言うと、紗絢は家へと向かう。  (あーちゃんは、良い子で待ってるかな)  今日は、1日彩華のママでいてあげる事に決めたので、呼び方も彩華ではなくて、あーちゃんと呼ぶ。そんな事を考えながら、帰ったら彩華が興味をもっているのかを調べないとと思いながら家路へと着いた。  家に帰ると、案の定彩華はあーちゃんのままだった。  「ママおかえりー」  (やっぱりこのままだよね)  もしかしたらとは思ったけど、やっぱり彩華はあーちゃんのままだったので、紗絢はママになる。  「ただいまあーちゃん。良い子にしてたかな?」  「うん」  偉かったねと言いながら、彩華の頭を撫でる。さすがに、今日は彩華が興味をもっているかは、調べられないし聞けないと思い、明日からにしようと思った。  予想通りで、彩華は寝るまであーちゃんのままだった。  (明日には戻ってるよね。明日から調査しないとな、でもいきなりは興味あるのとは聞けないから、やんわりと本を題材にして聞いてみよう)  紗絢は、そんな事を考えながら隣で眠る彩華の頭を撫でていた。  さて、どうやって切り出そうかと、紗絢は考える。本を題材にするのは良いけど。  (やっぱり、私がそういうシーンが良かったと言うべきだよね)  紗絢が、そんな事を考えている中、あーちゃんから彩華に戻っていた、彩華はスマホの掲示板に質問をしていた。  女性限定の掲示板に、紗絢との仲が進展しない事を相談していた。  内容は、私は年上の女性とお付き合いしているのですが、同棲を始めて数ヶ月経つのですが、彼女はキスより先の事をしてくれません。お互いに初めての恋人で、中々進展しません。どうしたら私を求めてくれますか?といった内容で質問していた。  (これで、色々な意見くるよね。その中から、私に出来る事をすればきっと紗絢も)  お互いに、方法は違えど同じ事を相談していた。  勿論お互いに、相談しているとは思っていなかった。  (そう言えば、お仕事の相談上手くいったかな?解決したかな?)  紗絢が仕事の相談を、音にしたと思っている彩華は、紗絢に聞いてみる。  「そう言えば紗絢、昨日お仕事の相談に行ったんだよね?解決した?」  「ひゃい!」  突然話を振られた紗絢は、驚いて変な返事をしてしまう。  「ひゃい!って、それで相談上手くいったの?」  「う、うん。ちゃんと相談乗ってもらってアドバイス貰ったよ」  「そうなんだ。良かったね」  良かったねと言っているのに、何故か彩華は不満そうである。  紗絢は、頭に?マークを浮かべながら、彩華どうしたんだろうと考える。  彩華は、大人でいつも紗絢の相談に乗る音に相変わらず嫉妬していた。  (私は、どうせ子供ですよ。紗絢のお仕事の相談になんて乗れませんよ)  まさか彩華が音に嫉妬しているなんて、思っていない紗絢は、頬を膨らませて怒ってる彩華を見て、頭に?マークを更に増やして、彩華どうしたんだろうと考えていた。  彩華は、不機嫌さを隠さずに再びスマホを見出す。  紗絢は、彩華に聞くタイミングを逃してしまい、仕方なく仕事をする。  彩華は、掲示板を見る。意見が来てないか確認する為に。  掲示板を見ると、早くも意見が来ていた。  意見を見ると、あなたから迫ってみたらいいと思います。相手も初めての恋人で、どうしていいのかわからないと思いますので、あなたから、積極的になってみては?と言う意見が多い。  (や、やっぱり私からいくしかないのかな?)  彩華は、そう思いつつ更に質問をしてみる。  私から、積極的になった場合、彼女にHな女の子と思われないか不安です。と書き込むと、すぐに意見が来る。  大丈夫!誰だって好きな人とは、そういう関係になりたいと思うはずだから、心配しないで、アタックあるのみと意見が来たので、 彩華はありがとうございます。頑張ってみますと書き込む。  (そうだよね!好きな人と、そういう関係なりたいって思うのは変じゃないよね)  彩華は、掲示板の意見に勇気をもらっていた。  (後は、誘うタイミングさえ間違わなければ、紗絢だって応えてくれるよね?)  彩華は、いつがそのタイミングか見極めなければと真剣に考えていた。  一方タイミングを逃した紗絢は、仕事をしつつお昼ご飯の時に聞こうと決めていた。   いつまでも、聞かないでいたら、相談に乗ってくれた音先輩に悪いし。  紗絢は、切りのいい所で仕事を止めると、お昼ご飯を作り彩華と食べ始めると、早速彩華に聞いてみる。  「あ、あの彩華?」  「何?」  「この前、彩華に貸してもらった小説面白かったよ」  「私のお気に入りだからね」  何故か彩華は、自慢気である。百合小説大好きな彩華は、自分の選択に自信を持っていた。  「それで、私二人が結ばれて、そういう関係になったシーンがお気に入りなんだけど、彩華はどのシーンがお気に入り?」  彩華は考え出す。暫く考えて答えが出たようで話し出す。  「私は、結ばれたシーンも良かったけど、一番は主人公が告白したシーンかな」  「そ、そうなの、結ばれてからのシーンはどうだった?」  彩華が、そういう事に興味があるか知りたい紗絢は、もう一度聞いてみる。  「結ばれてからのシーンなら、違う作品の方が良かったから、今度そっちの本貸すから読んでみて」  「うん、ありがとう」  これでは、彩華がどう思っているかわからない。  (やっぱり、直接聞くしかないのかな?)  紗絢は悩む。もし直接聞いて、紗絢の望む答えじゃなかったらと。   「紗絢は、そういうシーン好きなの?」  唐突に彩華が聞いてきた。  「わ、私?」  「もし好きなら、おすすめいくつかあるから、読んでほしいなって」  彩華から、逆に聞かれるとは思っていなかったので、焦ってしまったが、これはチャンスなのではと、私がそういう事に興味があると知ってもらうチャンスなのではと思い、紗絢は素直に答える。  「私は、そういうシーン好きだよ。読んでていいなって思うから」  「そうなんだ。ならおすすめ貸してあげるから読んでね」  「ありがとう」  彩華の顔からは、嫌悪感の様なものは見えない。  (もしかして、彩華そういう事に嫌悪感は抱いていないかも)  そう思うと安心するが、興味があるかは結局わからなかった。  (紗絢、結ばれてからのシーンが好きって事は、私ともしたいと思ってるのかな?)  彩華は、確証は持てなかったが、脈ありなんじゃないかと思い再び掲示板に質問してみる事にする。  彼女は、小説の女の子同士で愛し合うシーンが好きだと言ってました。これってやっぱり、私ともそういう事を考えてると思って間違いないですか?  意見には、それは脈ありと考えていいと思います。  間違いなく、あなたとそういう関係になる事を望んでいると思います。  掲示板の意見を見た彩華は、嬉しくなった。やっぱり紗絢は私と......そう思うと自然と頬が緩んでいた。  紗絢は、結局欲しかった答えを得られずに悶々としながら、仕事に向き合うしかなかった。  彩華は、いつ誘うのがベストかをずっと考えていた。  
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