流星群

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翌日も同じように妹を保育園に送り、僕は学校に行き、授業が終わったらちぃを迎えに行く。 それから適当に夕食をとって、風呂に入る。 シャツを脱いだ時、ふと洗面台の鏡を見る。正確には、鏡に映った自分の背中を。 そこにはいくつもの痕があった。小さな円形の、やけどの痕が。こんな目にあうのは僕だけでいい。ちぃが生まれた時に誓った。妹には傷一つ付けさせないと。灰皿の代わりになるのは僕だけで充分だと。 シャワーを浴びて自室に戻り、しばらくすると玄関の開く音。階段を上る音。それから、扉をノックのする音。今日はドアは開かなかった。足音が遠ざかったのを確認して、ベランダに出る。 「あと、に……ふつか?」 ちぃは指を二本立てて首をかしげる。 「そう、ふつか。二日だ」 酔った男の傍で、母さんがうずくまって泣いている。ボサボサの髪の男が大きな声でわめいている。 僕はその様子を、薄く開かれたドアの隙間から見ていた。 ふと、男が僕の方を向く。目が合う。血走った目。 逃げようと思うのに、体が動かない。 男は足音も荒くこちらに来る。ドアを蹴り開け、僕の胸ぐらを掴んで――。 目を覚ますと、パジャマが汗で湿っていた。鼓動が早い。 カーテンの隙間からは朝の光がキラキラと差し込んでいた。 僕は吐きそうになりながらも学校に行った。 その日の夜。また、ノックの音。でも今日は、それだけじゃなかった。 「聖也くん、入るよ」 声がして、部屋に入る音。椅子に座ったのだろう。カタンと音がした。 僕は布団をかぶり、小さく丸まっていた。 「また、保育園に行ったんだってね」 僕は応えない。ギュッと祈るように両手を握る。 「あれからもう三年になるんだ」 なおも応えないでいると、ため息が聞こえた。 「また明日、話そう」 もう一度ため息。それから部屋を出ていく音。 ほっと息を吐いてベランダに出ると、ちぃは残念そうに眉尻を下げていた。 「くもっちゃったね」 朝は晴れていたのに、夕方から雲が出てきていた。 「明日は、晴れるかなあ」 「晴れるよ。大丈夫」 心配そうな顔をしていたちぃは、 「晴れると良いなあ」 と、キラキラとした笑みを浮かべた。 晴れる。きっと大丈夫。僕たちは一緒に、流星群を見るんだ。絶対に。
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