バベルの奴隷商

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バベルの奴隷商

 (ナツメ)という弱冠(じゃっかん)十五才の少年が、オレの主人だ。 「ちゃんと約束通りの値段で買ってくれた?」  ソファから立ち上がると、(ナツメ)はそう言いつつオレのところへ小走りにやって来た。  オレは無事に取り引きを済ませてきたことを伝える。  オレは(ナツメ)に買われた人間。なおかつ棗の友人であり、従者という立場にある。   「お前、いつまでこんな商売(こと)続ける気なんだ」  ポケットに手を突っ込んだままでオレは言う。 「んー……続けられる限り、かな?」  そう言って棗は、にへっと笑う。  オレはため息をつくしかない。  ――どうしてそんなふうに笑えるんだ、こいつは。    富の格差ってやつは、今や人間すら商品に変えちまった。何かのたとえや皮肉とかじゃない。文字通り、値札の貼られた人間が市場に並べられている。    市場には売り買いする側の人間、そして売られる側の人間、そのニ種類がいる。  棗は売り買いする側の人間だ。  早くに亡くなった親の遺産を元手に、この年齢で立派に商売をしている。  才能なのか努力の賜物(たまもの)なのか、今のところ上手くいっている。  オレはと言えば元々は売られる側の人間で、運良く処分されずに済んだ人間だ。  ――いい加減、何とかしないと……こんな商売がいつまでも上手くいくとは思えない。
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