辛いと幸せ、一番と唯一

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「……もうやだ。俺が生きてる意味ってあるのかなぁ。死にたい」  君は膝を抱えて、ぽろぽろと涙を零す。ただでさえ小柄で華奢な身体が、一層小さく見える。  あぁ、またいつものやつか。 「そんなこと言わないでよ。ハルがいなくなったら、……僕が悲しいから」 「そんなこと言ってくれるの、悠真だけだよ。嬉しい」  君は潤んだ瞳を細めて、はにかむように微笑う。  知ってるさ。君が言って欲しい【言葉】なんて幾らでも。『心配するよ』『何があったの?』『大丈夫だよ』『一緒に頑張ろう?』。……僕の気持ちを乗せる必要なんてない。  本当に死んじゃったらどうしよう。想像するだけで、耐えられないどろりとした感情と吐き気がこみ上げてくる。  君の頭をくしゃりと撫でた。ただ、撫でただけ。なんの意味もない。気持ちをのせると僕が耐えられないから、形だけの空っぽの慰め。それなのに、君は嬉しそうに僕の手に戯れる。  そんな君のことが、滑稽に見える。 「……めん、ハル」 「えっ、なに?なんて言ったの?」  ほんとに死ぬ勇気なんてないだろ。どうせ心配かけて、優しくされて、甘えたいだけなんだろう!?  君にぶつけてしまいそうになる。弱いのは君だけじゃないかもしれない。  君は僕からじゃなくても、【言葉】をかけられれば、誰にだって同じようにその笑顔を向けるだろう。君のことを軽蔑、してるのかもしれない。 「ゆうま?」  あぁ、僕は今、酷く歪んだ顔をしてるだろう。君には、見せたくないなぁ。  君が誰でもよくたって今は構わない。君が真っ先に縋るのは僕で、甘えたいのも僕なんだから。 「ハル、ずっと2人でいてくれる?」 「?……うん!当たり前でしょ」  変わらない、眩しい笑顔。つられて僕も笑ってしまう。君みたいに綺麗に笑うことはできないけれど。  僕にとって君は、一番じゃない。唯一なんだ。……君にとっても、いつかそうなればいい。
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