日誌

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 雨が降り続けている。 この数ヶ月というもの、毎日、雨は止む事はない。 奇跡だろうか、 それとも  岩と砂の広がる朱色の大地。 大小の岩で造られた景色が、地平線の彼方までも見渡せる不毛の地。  その最初の透明な一滴が、私の厚い手袋にゆっくりと落ちるのを見た。 それが何なのか、最初は認識出来無かった。  やがて、淡く広がる朱色の空から静かに降り注ぐ水滴に 岩と砂の不毛の大地が 暗い赤色へと徐々に染まり広がってゆく光景を見た。 私は幻覚を見ているのだと思った。  本来の調査が終わった班は既に帰還している。  幾つか在った他の住居施設はもはや使用出来ない。娯楽施設を除けば、私達の住居施設はまだ整っている。  しかし恐らく私達の班にも間もなく帰還命令が出るだろう。      あれから、数カ月、   雨はまだ降り続けている。私はその光景を眺めている。    このクリュセ平原に、  赤い火星に、 川が、うねりを、増している。  第3基地T-MC-JC 20XX年 8d8638f9-982d-4e10-88be-7b3ddb619f77
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