(一)

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(一)

 カッとなったとはいえ、野上省吾はしまったと思った。とっさに手にした包丁で、同棲していた樋口和葉を刺し殺してしまったのだ。  まだ息をしているかもしれないと体を何度も揺さぶってみたものの、彼女の目は見開かれたまま、揺さぶられるがままに中空に視線を上下左右へと漂わせるばかりでまばたきを全くしなくなっていた。  さてどうしようかと案じた野上は、小説やテレビドラマなどでよくある、死体を埋めて隠すことに決めた。 (続く)
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