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僕と姫の出逢いは運命的だった。
散歩に出かけた森の中に姫が佇んでいた。
その姿に僕は一目惚れしてしまったんだ。
「…何者だ?」
今思えば、僕の姿を見て動揺すらしなかった姫の度胸は流石としか言えなかった。
「あ、え、い、いえ」
動揺したのは僕の方だった。
だって、人間に話しかけられるなんて初めてだったから。
「妾を殺しにきたか」
その言葉に悪魔の僕ですら驚きを隠せなかった。
「こ、殺す!?」
悪魔だからって、何でもかんでも殺さないよ!
とは言えず、ただただ首を横に振った。
「では、何故こんなところにいる?」
有無を言わせない強い力で問われて、ふと思った。
「あのー、あなたは何でこんなところにいるんですか?」
僕の問いかけに、姫はものすごく睨んできた。
「質問を質問で返すなんて頭悪いな」
え?逆に僕が殺されるんですか?
「…散歩…です」
目力に押されて、小さく答えた。
「は?声が小さい!」
「は、はいぃ!散歩してました!」
背筋を伸ばして大きな声で答えた。
怖いよ〜(泣)
「は?散歩?こんなところを?」
「は、はいぃ」
もう怖くて泣きそう…。
「そうか…。引き止めて悪かった」
そう言って、何とも表現できない表情を浮かべた。
ほっとしたような、寂しそうな、覚悟したような、泣きそうな、何か決意したような、希望のあるような、ないような、僕の頭では思いつかないほどの色んな感情を含んだその横顔が、この世のものとは思えないほど、綺麗だった。
その日2回目の一目惚れだった。
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