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僕が彼女が王国の姫だと知るのは、その数カ月後、森の中にいた兵士たちの言葉がきっかけだった。
「戦争が始まるらしい」
人質として姫が敵国に渡されたが、戦争を止めることは出来なかったらしい。
というより、先王妃の娘である姫を追い出し、戦争で死んだことにしたい現王妃の策略だという。
この前、逢った人じゃないかな…?
あの気品のある佇まい、姫だったんだ。
ってか、戦争なんてここで起こさないでよ。
僕は静かに暮らしたいのに…。
「あのー…」
「う、うわぁぁ!」
「その敵国ってどこですか?」
僕は逃げようとする兵士さんに、どうにか敵国の場所を教えてもらった。
戦争をしないでくださいってお願いして、出来ればあの人にもう一度逢えたらいいな。
姫を見つけるのは簡単だった。
お城のバルコニーにいるんだもん。
あんなに綺麗な人、目立たないわけがない。
「こ、こんばんは〜」
姫は僕を見て、瞳を大きく見開いた。
そうだよね、真っ黒な翼で突然現れたら驚くよね。
でも、僕は逃げられる前に伝えたかった。
「あの!戦争が起きるんです!逃げましょう!」
僕の言葉に、姫は逃げるどころか不敵な笑みを浮かべた。
「遂に殺しにきたか、あのババァ」
え?
「こんなところに連れてこられて、のうのうと生きていられるとは思っとらんわ」
呆気にとられる僕に姫は、鋭い視線を投げつけた。
「お前は何者だ。何故そんなことを言いに、こんなところまで来た?」
こ、怖い…。
でも言わないと。伝えないと!
「僕は悪魔。だけど、あなたを助けたい」
ついでに戦争も止めてほしい。
「ほぅ?どうやって?妾をここから連れ出したとて、戦争は止まらぬぞ?」
うーん、僕にそんな力はないし…。
「雨、降らせます?」
「はあ?」
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