0人が本棚に入れています
本棚に追加
「雨が止まない呪いならかけられるんで」
僕の提案に姫は盛大なため息を吐いた。
「お前、本当に悪魔か?もっとこう、生きながら死を味わうような呪いをかけようとは思わんのか」
姫の綺麗な口唇から、とてつもない単語が飛び出す。
「え、えっと、戦争を止めたら雨を降らせないことにすれば、戦争も止めてくれるかなーと」
僕の説明に姫は、クスリと笑った。
笑った?
え?めっちゃ可愛い。
「お前は変わったやつだな」
そう言うと姫は両手を広げた。
「ほら、攫ってくれるんだろう?」
「は、はい!」
僕は、姫の身体を抱き上げた。
人間に触れるなんて初めてだ。
細くて、柔らかくて、どうしていいか分からない。
「そうじゃない!」
抱き方が悪かったらしい。
「ここに腕入れて、あーもー下手くそ!あったま悪いな」
何となく綺麗な顔で誤魔化されてきたけど、姫の口が悪い。
とは、この状況では言えない。
「貴様、何者だ!」
城の人が僕に気付いて、ゾロゾロと現れた。
「姫を返せ!」
一番大きな声を張り上げた男の人に、姫が身震いする。
「うわっ、気持ち悪っ。何、いきなりカッコつけてんだよ。てめぇの株上げるためのイベントじゃねぇから」
姫の小さな呟きは男の人には聞こえないだろうけど、僕にははっきり聞こえた。
「姫!今お助けいたします!」
「いやだから、張り切りすぎてマジでキモい。無理。むしろお前になんか死んでも助けてもらいたくねぇよ」
姫は、あの人間の男の人より僕を選んでくれた。
めっちゃ幸せ〜(泣)
「おい、悪魔。早く本題言って立ち去れよ」
幸せに浸ってる僕に、姫が現実に戻すように冷静な声をかける。
本題?
僕が首を傾げると、強烈なボディブローを食らった。
「ぐふっ」
「戦争を直ちに止めろ。さもなくば、両国に永遠に雨を降らす呪いをかける、って言え」
姫に言われるがまま、僕は人間たちに伝える。
「ほら、さっさと立ち去れ」
「え?いいの?呪いかけてないけど」
「後でいいだろ!もう身体が痛い!早くしろよ」
ワガママだなー。
とりあえず、僕はその場から立ち去ることにした。
呆気にとられた人間たちを振り返りながら、大変なことをしたんじゃないかと思った。
最初のコメントを投稿しよう!