悪魔と姫

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「雨が止まない呪いならかけられるんで」 僕の提案に姫は盛大なため息を吐いた。 「お前、本当に悪魔か?もっとこう、生きながら死を味わうような呪いをかけようとは思わんのか」 姫の綺麗な口唇から、とてつもない単語が飛び出す。 「え、えっと、戦争を止めたら雨を降らせないことにすれば、戦争も止めてくれるかなーと」 僕の説明に姫は、クスリと笑った。 笑った? え?めっちゃ可愛い。 「お前は変わったやつだな」 そう言うと姫は両手を広げた。 「ほら、攫ってくれるんだろう?」 「は、はい!」 僕は、姫の身体を抱き上げた。 人間に触れるなんて初めてだ。 細くて、柔らかくて、どうしていいか分からない。 「そうじゃない!」 抱き方が悪かったらしい。 「ここに腕入れて、あーもー下手くそ!あったま悪いな」 何となく綺麗な顔で誤魔化されてきたけど、姫の口が悪い。 とは、この状況では言えない。 「貴様、何者だ!」 城の人が僕に気付いて、ゾロゾロと現れた。 「姫を返せ!」 一番大きな声を張り上げた男の人に、姫が身震いする。 「うわっ、気持ち悪っ。何、いきなりカッコつけてんだよ。てめぇの株上げるためのイベントじゃねぇから」 姫の小さな呟きは男の人には聞こえないだろうけど、僕にははっきり聞こえた。 「姫!今お助けいたします!」 「いやだから、張り切りすぎてマジでキモい。無理。むしろお前になんか死んでも助けてもらいたくねぇよ」 姫は、あの人間の男の人より僕を選んでくれた。 めっちゃ幸せ〜(泣) 「おい、悪魔。早く本題言って立ち去れよ」 幸せに浸ってる僕に、姫が現実に戻すように冷静な声をかける。 本題? 僕が首を傾げると、強烈なボディブローを食らった。 「ぐふっ」 「戦争を直ちに止めろ。さもなくば、両国に永遠に雨を降らす呪いをかける、って言え」 姫に言われるがまま、僕は人間たちに伝える。 「ほら、さっさと立ち去れ」 「え?いいの?呪いかけてないけど」 「後でいいだろ!もう身体が痛い!早くしろよ」 ワガママだなー。 とりあえず、僕はその場から立ち去ることにした。 呆気にとられた人間たちを振り返りながら、大変なことをしたんじゃないかと思った。
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