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第一発見者
雨なんかこの世界から消えてしまえばいいのに。男は駅舎を出るなり天に唾した。中途半端な小雨ほど鬱陶しいものはない。タクシー乗り場の長蛇を睨見、彼は降りしきるなか駆け出した。宿に向かう傾斜は思ったよりも急でたちまち息切れがする。雨宿りしようにも一本道の両側は岩だ。おまけに水はけが悪く、ぬらぬらとして荷物の置き場がない。結局、水濡れを我慢して息つくこともできず、前途多難に向き合う羽目になる。
彼は再び悪態をついた。曇り空が粘土のようだ。
「異母の糸、つうのが有る位だから、実父のロープもあっていいんじゃね?」
「バカ! 人ひとり死んでんだぞ」
措置入院した弟が残した留守動画。ドラマでも動画サイトでもなく生の通話だ。以前から塞ぎがちだった父が首を吊った。遺書はなく現場に争った跡もない。警察は第一発見者である弟を逮捕したが処分保留のまま釈放した。ただ、その経緯で「何か」が起きたらしく彼は閉鎖病棟の人となった。直前に残したメッセージがそれだ。弟の狂気で俺は訃報を知った。父は何をされたんだ。
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