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「夏目ー」
そう呼ばれて俺は振り返った。
振り返った先にいたのは、俺の恋人の淳。
「…なに?また、課題見せろって?絶対嫌だかんね」
「そう言わずにさぁ〜!頼む!お前だけが頼りなんだよ〜」
「いっつもそうやって俺を丸め込むんだ。…後でジュース奢ってよね」
「やりぃ!何本でも奢るわ!」
いつもはキリリとしてかっこいい顔が情けなく歪んでいるのがどうしようもなく愛しく思えてしまって、ついつい甘やかしてしまうのだ。
本当はこいつの為にならないから嫌なんだけど、いいよって言った後に見せる無邪気な顔がかわいくて。
ジュースなんて、本当はどうでもいい。
「っていうかなんで淳はやってこないんですかね?」
「えーっとぉ……昨日、バイトで…」
「淳が大変なの、分かってるつもりだけど俺の課題ばっか写してたら試験とか大変だよ?」
「うぅ…」
目を逸らしながら言い訳をする淳に溜息。
一人暮らしで仕送りもない中やりくりするのがどれだけ大変か、俺も同じだしわかるけどもし俺が課題出来ていなかったらどうするんだろう。
…まあ、そんな事ないし淳もそう思ってないんだろうけど。
じろりと睨めば縮こまる淳に口を開こうとした時「淳せんぱぁい〜!」と可愛らしい女の子の声が聞こえてきて俺は固まった。
そんな俺に構わず女の子は淳の腕に絡みつき「今日の夜暇ですかぁ〜?みんなで飲みに行こうって言っててぇ〜」と上目遣いに淳を見た。
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