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『半年前に起きた女子大生の轢き逃げ事件
の犯人は未だ捕まっていません。何か情報をお持ちの方はご連絡下さい』
テレビのアナウンサーが視聴者に向かって
訴えかけていた。
「ったく…そんな前の事件よりもっと最近の
事件の情報を寄越せってんだ」
中里は休憩室の椅子に座り
テレビに向かって悪態をつきながら電源を落とした。
「中里さん、そんなにイライラしないでくださいよ、コーヒーでもどうぞ」
中里の前にコツンと缶コーヒーが置かれる。
見上げると後輩の高橋が立っていた。
「イライラもするだろ、もう3人も殺されてるのにまるっきり手掛かり無しだぞ」
中里と後輩の高橋は連続殺人事件の
犯人を追っていた。
最初の被害者が殺されたのは2ヶ月前だった。
被害者は30代のサラリーマンの男性。
路地裏でナイフのような鋭利な刃物で心臓を貫かれていた。
その約2週間後には大学生の女性が
ロープで首を絞められて殺された。
そして最後の殺人はその1ヶ月後、
50代の女性が殺されていた。
この女性もまたロープで首を絞められていた。
性別も年齢も、殺され方まで違ったため
当初は別の事件だと考えられていた。
しかし、この3人の被害者には共通点があった。
3人とも人通りが少ない路地裏で殺されていること。そして、左の二の腕に犯人によって何かのマークのようなものが刻み込まれていたこと。
マークの模様は三者三様ではあったが
この共通点から連続殺人へと捜査が切り替えられた。
中里と高橋は事件の被害者の家族や
親しかった人たちから聞き込みを行っていたが
全く手掛かりが掴めずに行き詰まっていた。
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