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「大丈夫ですよ。中里さん、ちゃんと聞こえてます。」
焦る中里とは正反対に、落ち着いた声をしている。
「よかった、最初の事件現場だ
すぐに来てくれるか」
「僕はもういますよ
中里さんの前に立ってます」
「ん?どういうことだ?」
そう言いながら中里は路地に立つ人物を見た。
その人物はゆっくりと手を頭に持っていき
深くかぶったフードを脱いだ。
そこには中里がよく知る後輩の顔があった。
「高橋…?お前…こんなところで何してるんだ…?」
今度は無線ではなく直接話しかける。
「中里さん、まさかこんなに早くここまで来るなんて思いませんでしたよ。さっさと殺して逃げようと思ってたのに」
「殺すって…その人…お前が殺ったのか!?」
中里は状況が読み込めなかった。
動揺する中里に高橋は告げた。
「そうです。この人も、今までの3人も
全部僕が殺しました」
「なんで…どうして…」
あまりの驚きにうまく言葉が出てこない。
「僕の妹、知ってますよね?」
「ああ、確か大学生の…」
高橋の妹は直接会ったことはないが高橋からよく話は聞いていた。高橋は10歳も離れている妹のことを
溺愛していた。
いつからかその妹の話も聞かなくなったが…
「僕の妹…死んだんです、半年前に」
中里はさらに衝撃を受けた。
確かに最近では妹の事は話していなかったが
高橋もそんな素振りを見せていなかった。
「車に轢かれたんです。轢き逃げでした」
「もしかして昼間にテレビでやってた…」
「そうです。そして逃げた犯人、彼はもうこの世にはいません」
高橋は人を殺した言うのに平然としている。
「僕は妹を轢いた犯人を自分の手で見つけ出し
殺そうと決めたんです。だから妹が死んだことも誰にも言わなかった」
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