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押し迫る恋心
「奏、おはよ!・・・って、何なの、その顔っ!」
月曜の朝、ボケーっと登校して、ボケーっと机に肘をついて、外を眺めてた。
中学からの親友、隣のクラスの浜崎凜子に肩を叩かれる。
「・・・やっぱ、ひどい?」
「うん、かなり。また深夜のエロ映画?」
言っておくけど、普通の映画だっつーの!
「エロじゃないし、昨日は・・・考え事?」
「なぜに疑問形?」
伊勢谷のこと、色々考えてて寝不足とか言えないし
「・・・ウィルス感染みたいなもん」
「全くイミフだわ」
伊勢谷の疑問形返しが移ったなんて、言えない。
めっちゃめちゃ冷やかされるのがわかってるから・・
『おはよー!』
『伊勢谷くん、おはよう!』
『おはよう!』
教室内が、突然、騒がしくなる。
いつものことだ。いつもと変わらない。
学校一の人気者、王子伊勢谷の登場・・・登校時は、こんな感じだ。
気にもならない光景だったはず
だのに、ついつい伊勢谷の姿を見ようとしてしまう自分の目ん玉が憎い。
金曜日、伊勢谷の部屋に強制拉致されて
すったもんだしながらも、楽しく話をしながら仲良くご飯食べた後
観始めた『ユージュアル・サツペクツ』というミステリー映画。
すごい謎解き映画で、アタシはじっくり観てたわけだけど
伊勢谷は、観たことあると言っていて、しかも前半で謎溶けたとか言ってて・・
疲れてたんだろうね、寝てしまった伊勢谷で。
起こすのも悪いからと思って、書置きメモを残して、ひとり帰ったわけだけども・・
『夜中にごめん 寝ちゃってごめん ちゃんと帰れた?』
午前3時前に、ラインが届いて・・。
『大丈夫だよ。ゆっくり寝て。学校で謝ったりなしね!絶対、言うなよ!』
って、念を押した。
この3日3晩、眠れない原因を作ってくれた男と言ったら・・・。
朝からめっちゃ爽やかな微笑みを振りまきながら、みんなに挨拶を返した後、
「柊、先に寝ちゃってごめんね?」
堂々たる態度で言い放ちやがった。
「あー、別に、アタシひとりであんな雑用余裕だからおk」
・・・アタシの視界から、消えてくれ。
・・・アタシの頭の中から、消えてくれ。
誤解を招くような言い方すんなし!!!!!
「はぁ~」
無意識に、大きなため息をついていた。
「ちょっと、何があったのよ」
「へ?」
「しらばっくれんな。今の溜息、王子と何があった」
す、するどい・・
だけど、そのするどさは、今はうざい・・
つーか
誤解されるような言い方すんなし!!!
「まさか、アンタも好きになった?」
「ちがうっ!わかんないけど、それはない!」
剥きになってしまった後で、激しく後悔する。
声がデカかったらしく、視線を感じて辺りを見回せば注目を浴びてるし。
おまけに伊勢谷と目が合って、クスっと笑われて。
慌てて目を反らした先には、ニヤニヤしている凜子の顔・・・。
「相変わらず、わかりやすっ!」
凜子に笑われる。
まぢ、やめろ!!!
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