ゴールじゃなくてスタート

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大学進学時にはすでに、伊勢谷は窮地に立たされていた 「お前が帰ってくるまでは、なんとか踏ん張って見せる」 仕事人間だった親父 背中しか見せたことがなかった親父 「すまないと思っているが・・・頼むっ」 俺に頭を下げた 嬉しい気持ちより ショックの方が大きかったのを覚えている 『伊勢谷の次男』としての体裁 有名進学校、優秀な息子を気取りながら 敷かれたレールの上を歩いてさえいればいい いくら体裁だとしても、学歴は悪いより良い方がいい 自分の努力は、自由になる為の切り札としか考えてなかった 親を捨てるもの、俺の自由 それくらい簡単に考えることしかできなかった 家族を大事に想う気持ち・・それすらなかった俺に 誰かと守り合う、誰かを守りたいと思う気持ちを教えてくれた 奏と出逢えて、一緒に過ごした時間が、俺を変えた どんな美人に言い寄られても、押し倒されても 情けなくなるくらい、他の女性では不能・・ 帰国して、奏に触れると、不能ではない自分に安心して(笑) 不思議なくらい、奏しかいらない俺・・というより 奏にしか、反応しなくなった俺の下半身(笑) 奏には、いつも怒られるくらい精力ある俺が、勃たないって・・ 元々、面倒臭がりな俺は、この先も、奏としか恋愛する気がないとは言っても、身体は素直に反応してしまうものだと思っていた やはり、感情というものは、身体に大きな影響を及ぼすという事実も自分の身体で経験し 逢えずともデビューした奏の姿を、メディアで見る度に欲情しながら、良きライバルでもあって 負けてはいられない気持ちで 勉強はもちろん、世界情勢、法律、伊勢谷内部全体の把握・・ 今までになく、死ぬほど勉強した時期だと思う 一つのことを極めようとするのには 底辺に隠れる基礎の物事から経験することが大切で 勉強だけじゃなく、付き合いももちろん大事 だけども、言い寄ってくる女性には見向きもしない・・ 俺はいつの間にか、同性愛者になっていて 好都合であったり、それはそれで厄介でもあったけど 世の中には、色々な形の恋愛感情があるのを間近で知ることができた 奏と離れなければならなかった期間が、俺をより成長させたんだ
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