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嘘もつきたくない
変に隠したって、奏は察する
だから、全てを話した
奏の返しは、やっぱり、珍獣で
「もし転んだりしたらさ、『ヒモ』ってやつになったらいいと思うんだよ」
あっさり
ほんとにあっさり、こんなことを言い放った挙句
「朝陽が、アタシの『ヒモ』になるとか・・・ぶふふふふふ」
いつもの気持ち悪い笑い方で、笑ってのけた上に
「アタシさ、家事で1番好きなのって、食器洗いなんだよねぇ」
唖然のままの俺に、唖然上乗せするように
「認めたくないけど、すぐ顔に出ちゃう体質らしいから、コンビニとかウェイトレスとかの接客業より、皿洗いとか掃除婦とか、ひとり黙々とこなす作業の方が本当は向いてるんじゃないかって思ったりするんだけどさ、朝陽はどう思う?」
奏の伝えたいことを、頭で考えて
自惚れかもしれないけど、そう願いたいって思ってた呆然としたままの俺に
「残念ながら、一生ヒモを養って生ける自信はアタシにはない。だけども、朝陽と一緒にいられるなら自信ない接客業も、前向きにもがくよ、うん。二人なら借金も半分こ。どうにかなる、絶対に。」
嬉しくて
泣きそうになるのを誤魔化すために
「ありがとう、奏」
抱きしめた
「ん。悔いのないように暴れてこい、このやろう」
俺の肩に、顎を乗せて耳元で言って
俺の身体を、ギュっと抱きしめた奏
頑張ってこい
じゃなく
暴れてこい
この言葉は、響いたよ
俺は、何度でも、奏に惚れてしまうんだ
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