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まだまだ至らない俺の為に動いてくれる神谷恭介(カミヤ キョウスケ)
数年前、伊勢谷を定年退職した恭介の親父さんの病気を、俺の親父が気にかけ、色々世話をしたそうだ
その恩で、親父に尽くしたいと伊勢谷に就職した男
残念ながら、親父の健康状態を理由にした、俺の母親の策略により
伊勢谷の長男であり、俺の兄である悠斗が社長就任した後に、恭介が伊勢谷の秘書課に移動というタイミング。
恭介は親父に尽くすこともできず、その上、兄さんが専属で選んだのは恭介でなく、椎名頼子(シイナ ヨリコ)だったという流れがある
大学生時代の俺に、伊勢谷内部の情報を頼んでもないのに持ってくる
調べればわかることだと言えば、表向きにはなり得ない情報さえ、探り、調べ、証拠までをも添付した
「俺はまだ、伊勢谷のトップに立つかわからない。逆に俺は伊勢谷から逃げようとしてる側。それはあなたも承知してるはず。なのになぜ、俺にここまで?」
計り知れない忍耐と、犠牲と、努力が必要な内容を、惜しみなく俺に突き付けて
「あなたは伊勢谷のトップに立ちます。」
眼鏡の奥から、俺を真っ直ぐ捉えるんだ
「顔は奥様似ですが、瞳は総帥の瞳をしておられます。僕は、信じたいだけです。自分の目と自分が信じたいと思えた人を。」
恭介の熱意に負けたと同時に、伊勢谷内部を把握し尽す強力な味方を得た
「ピンチはチャンスなんだよ」
なんて余裕気取りで無理に笑ってはいるけど内心不安でたまらない俺の背中を
あっさり当たり前のように、ポンと押してくれた奏の懐の深さにも助けられ
1年かかったけれど、非常事態だけは脱出
そして、正式に伊勢谷コーポレーションの社長に就任した
作り直したレジャー施設は南アジア
拠点を日本に移したとしても、日本にはいられない
そもそも拠点を移す、そんな時間さえなかった
『空港が嫌いだ』と、奏は言った
5年・・1年短縮して4年かな
なんて期待させておきながら、俺は、最低な嘘つき男だ
おまけに伊勢谷の社長なんて肩書きはありながら、多額な借金まみれ男
「ごめん、奏」
心の中で、いつもこのセリフを言ってた気がする
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